ラ コリーナ近江八幡

以前から一度訪問してみたかった「ラ コリーナ近江八幡」

和菓子・洋菓子の製造販売と、喫茶・食事などの飲食事業を展開し、滋賀県近江八幡市を本拠地とする「たねやグループ」の「たねや クラブハリエのフラッグシップ店」として2015年オープンした「自然に学ぶ」をコンセプトとした、工場及び販売・飲食の大規模施設です。いや、施設というより「自然との共生環境を舞台とした小世界」という言い方をしたほうが良いかもしれません。

「クラブハリエ」といえば「バームクーヘン」が有名どころですが、この施設内ではクラブハリエを他、「たねや」さんが製造する「和菓子」、「洋菓子」を余すところなく購入することができます。

この「ラ コリーナ近江八幡」をどうしても訪問したかった理由は、その外観にあります。

まるで建物が緑で覆われた山の中に作られているような外観なのです。これは、屋根面に「芝」を植えていることで、「屋上緑化」ならぬ「屋根緑化」を実現しているからなのですが、軒の出が深く、外溝としての植栽の「高さ」によって、草原に埋まっているような印象をもたらすように建築されています。

また、コンセプトを「自然に学ぶ」ということもあって、施設全体が自然と一体となることをかなり意識されている環境が作られています。

施設中央部には、水田を配置し、その周辺には、畑も栽培してますし、円周状の歩道の脇にはなんと「小川」を作り、オタマジャクシがいるような、ある意味、昔見た田園風景そのものが再生されています。

自然があふれている施設は全国いたるところにありますが、その大多数は人工的に配置された「緑」であり、草木です。それはそれで植栽配置としては悪くはありませんが、自然環境という部分まで意識されているか?といえば、ある種、「庭」的な発想でしかないと思います。

もちろん、この施設も、人工的に作られた自然環境であることは変わりありませんが、なにか感じるものが違うのです。なんと表現していいか迷うのですが、「着飾らない自然」なんでしょうか。そして、記憶の底にある、小さい時に見たあの風景がそこにあって、なんとも言えない懐かしさも感じさせるのです。

建築的に興味があったのは、屋根緑化です。

手が届くところまで軒が下がっていたところがあって、じっくりと納まりを拝見しました。たぶん防水した屋根躯体そのものの上に薄い土層を配置し芝を植えているようで、土層がずらないように、アングル状のものを等ピッチで配置しているのでは?と思います。一度、資料を手に入れてしっかりと学ばせていただければと思います。

そして建物全体で言えることなのですが、店舗や工場部分の施設自体は最新の建築様式とはなっていますが、例えば、店舗などの外部窓などや、壁の仕上げについては、建築様式として新しさを出すのではなく、むしろ「古い」感じを演出しています。

壁などは、塗り壁ですが、鏝ムラでデザインすることはよくありますが、決してきれいにムラをつくるのではなく、むしろ「粗い作業」として表現していたり、全体に木をつかっていますが、「古木」として、アンティークなイメージで仕上げています。しかし、施設の大きさがデカいのでこれだけの古木を集めることはできないだろうと推測するのですが、もしかしたら、ウェザリングしているのでは?とも思いました。これはディズニーランドの施設でも用いられる「質感」を重視した塗装で、おそらくプラモデルなどを趣味とされている方なら常識的にされているかもですが、いわゆる「汚れ」や「傷」といったものを、一つ一つ表現していくというものです。もし、そうなら、この広大な施設全体にわたってのウェザリング作業は並大抵の労力ではなかったと思います。

これは、バームクーヘンの工場、販売棟の内部ですが、鉄骨造で作られているのですが、よく見ると、鉄骨が「錆びている」状態です。まぁ、はっきり言えば、本当に赤さびが浮いた状態であれば、構造材としての劣化も否定できません。これはおそらく、このように見せる仕上げを施していると思いますが、ちょっと触れるところがあったので触りましたw あの錆びた鉄の質感でしたw ですが、手に錆びはつきませんので、やはり塗装かシート張りで質感を出しているのでは?と思いましたが、そのような仕上がりを求めるというのは、すさまじい拘りだと感じました。なんとなくですが、「自然に学ぶ」をコンセプトにするということの「時間軸」というものを大事にされているという印象です。

次に窓などに使われている「ガラス」なんですが、よく見ると波打ってますよね?

これ、「大正ガラス」とか「昭和ガラス」といわれていますが、大昔のガラス製作技法では、現在のようなまっ平なガラスを作り上げることが難しく、平面的にムラがあるガラス板になっていました。それでも、昔はガラスは非常に高価なものですので、相当裕福な家でなければ使えませんでした。

その風合いにノスタルジックを感じるわけですが、フロートガラス製法が一般的な現代において、あえてこのようなガラス仕上げにすることは、相当なコストだと推測します。それでも建物コンセプトとしては、今のまっ平の透明ガラスでは合わないのはなんとなく理解できます。

このような施設建設では「コンセプト」が重要ではありますが、構造体としての建物だけではなく、その立地そのものも含めて、「コンセプト」を追求しつくすというのは理想ではありますが、それをとことんまで行った建築というのは、あまりないのでは?と思います。

ラ コリーナ近江八幡では、新店舗エリアが計画されているようで、完成したらぜひ見に行きたいと思います。

◎ラ コリーナ近江八幡
〒523-8533
滋賀県近江八幡市北之庄町615-1

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