前回の#2に続きます。
解体も完了して、次に待ち受けるのは、壊した部分に新築同様の流れで建物を建てていくことになるわけですが、その第一段階として、基礎や柱・梁などの構造的な計画が、現場状況と差異がないことを確認し、かつ、思惑通りになるか?を確認しなければなりません。
今回の思惑とは何が重要となるか?といいますと、「既存部分の床の高さ」と「改築部分の床の高さ」が寸分狂わぬ高さでピシーっとそろうということになります。この点については、設計段階からかなり神経質になりながら現場計測を行い、設計図書を書いてはいますが、当初の調査では中に荷物があったりして、なかなか正確に測れてはいないかもな状況ですので、実際の施工となった場合に大きな差が出てきてしまいますと、建物全体の高さが変わってしまいますので、確認申請に対して「高さの変更」などの申請手続きが必要になってしまいます。
特に、「最高の軒の高さ」や、「建物の最高の高さ」などはそれが低くなる分については特段の問題にはなりませんが、これらが高くなれば「軽微変更」とはいきません。なぜなら、これらの高さは斜線規制などの建築基準法上の規制に引っかかってくるわけですので、神経を使うことになります。まぁ、斜線ギリギリの設計でなければ、ある程度、「しゃーないよねーw」ってのはないわけではありませんけど、それでもやっぱし監理上は重要な要素になります。
ですが、それをきっちり守ることばかりに気をとられ、実際に出来上がったものの床の高さが違って、変な段差が付いてしまうと、これはお客さんにとっては「は?w」な感じです。そもそも、床の高さはすべて揃えて、バリアフリー化してほしいというお願いなのですから、設計でも施工でもしっかりとそのご要望を実現した上で、法的な部分でもクリアしていくということが重要になります。
というわけで、朝から高さの調査を行いました。


既存の建物に、基準となる「水平」を示す「水貫」といわれる部材を取付けます。この時、水平を調べるのに「レーザー水準機」を使うことが一般的ではありますが、精度を上げる場合にはレーザーは使いません。オートレベルを使います。実際にスケールなどで目盛りを読まないとレーザーでは誤差がでるためです。
ですがこのとき、もっとも重要なことがありまして、それは、
「設計で想定しているGLがどこか?」
を現場で明示するという作業です。GLは敷地や道路も含めて基準となる点(BM:ベンチマーク)を決めて、そのBMとどのくらいの差を計画して「設計GL」とするかは設計段階で決めています。よくGLはグランドラインだから現況の地盤面だという方がいますが、それはたまたま設計GLを現況地盤面にとっているだけのことで、起伏がある土地などの場合には、そんなことをしたらどこが基点かわかりませんよねw 分譲地などでまったいらの土地で仕事をする場合にはどうでもいいかもですが、そうでない場合には、設計段階からこの「GL」や「BM」はどこ?っていうのが現場施工においては重要なのです。
というわけで、今回の設計では、GL=BM+663としていますので、そのGLがどこ?っていうのを「どこからみてもわかる場所」に作ります。

このチマチマした字でかかれた「GL」ってところが、今回の施工での基準点となります。このGLは完了検査時点でも検査係に「で、GLどこ?」って聞かれますwww 聞かれないときもありますけど、検査項目ですのでちゃんと完了まで養生確保が必要です。
そして、水貫を打った上端から現況の1階の床の高さや2階の床の高さが実際にどうなってるのか?ということを調べます。そしてその結果を水貫に記載しておきます。

何気にかかれていますが、「水下」というのが貫の上端からどのくらい下がっているか?を表しています。今回、計測の結果、
GL:水下821mm
1FL:水下204mm
改築部分土台:水下240mm
改築部分基礎天端:水下365mm
という結果になりました。さらに、既存部分の「2階」を測りますと、
2FL=1FL+3115mm
となりましたので、構造としての2階の床梁は、
既存部分:3115-(構造用合板厚12mm+フロアー厚12mm=24mm)なのですが、改築部分は根太レス構法で構造をつくりますので、
改築部分:3115-(構造用合板厚24mm+フロアー厚12mm=36mm)となります。
今回、基礎を作るにあたっては、基礎天端はどこなん?という情報がしっかりと伝達できればOKなわけですが、その他の高さについてはプレカット屋さんに柱の高さを「正確」に伝える必要がありますので、このような調査が必要となります。
さて、次に必要なのは、これらの情報を元に図面化した場合、当初の設計計画と差異がないということを確認しなければなりません。

これは矩計図というものです。この矩計図の左側の塊が設計段階、右側が実測を元にした結果です。水貫を基点高さとして1階の床高さをしっかりと一致させた場合、計画との差異が計画変更届が必要にならないレベルかどうかを判断するわけですが、GLで5mm、2階の床高さで11mmの差がでました。誤差の範疇ですw


まぁ、悪くないレベルだと思いますwww 設計段階での高さ調査は意外といい線いってたということがわかりましたw これであとは基礎屋さんと、プレカット屋さんが間違わなければ、しっかりと床の高さは合ってくるわけですが、それでも材料の伸び縮みなどで3mm程度の誤差はでるわけですので、床の見切り材などで目立たなくする工夫を内装工事時点で実行することになります。
というわけで、まずは第一段階クリアな感じですw