変更は付き物な耐震改修工事と補助金申請

もうすぐ年の瀬ですが、今年は元旦に発生した能登地震の影響を受けて、耐震診断や改修工事への対応で忙殺された1年でした。発生したのが年度末を見据えた時期であり、かつ、その年度の耐震診断や改修工事の補助金申請などが締め切られていた時期であり、結果として、年度初めから補助金申請と工事スタートを目論むようなスケジュールだったわけで、1~3月は、計画や見積などに非常に多くの時間を必要としました。

耐震改修の補助金が手厚くなったことはウェルカムな話しですが、それでも、自己負担がゼロ円であることは稀で、ある程度の負担金を準備しておかなければ工事はできません。ですが、耐震改修はその性質上、なんらかの単価などでサクッと見積できるわけではありませんし、当然、補強内容は綿密な調査の上、決定されるものですので、どうしても壁の中がわからない場合は推測して設計する必要も出てきます。

ある程度は目論見通りに構造体ができているわけですが、正直、現代において常識的になっているような構造計画などは、それなりに歴史に培われた部分もありますので、耐震改修補助事業の対象になっているような昭和56年6月以前の建物は、そういう意味ではまだまだ発展途上の技術だったり、大工さんの「伝聞」による技術踏襲によって、「えw なにこれwww」という状況であるほうが多いかもしれません。

これまでのブログテーマでも「耐震改修あるある」なことを取り上げてきましたが、解体してみたら「思ったんとちゃう」というのは毎回あります。

補助金を受けなければ、このような状態でも、適宜対応していけば問題ないのですが、補助金を受けるとなりますと、この段階で「変更申請」というものが必要になります。これが補助金の性質上、非常にやっかいな手続きです。

原則として、変更申請が必要な場合というのは、その変更申請の「承認」が下りなければ工事の続行はできません。補助金はあくまでも、当初申請された計画内容に対して承認したものであって、その計画が思惑と違う場合には補助金を出すことはできません。極端に言えば、例えば、10個の金物を取り付ける計画の場合、9個しか必要がなかった場合、たった1個のことでも変更申請が必要なのです。

それでも役所のほうは「ある程度の融通」は利かせてくれますが、最終的に補助金請求となれば、変更申請を出して、承認請け、その承認を元に施工された記録(写真台帳など)をつくり、報告書をまとめ、請求という流れになります。この部分だけでも、相当な時間を要します。

耐震改修工事を請ける工事業者が少ないのは、この「補助金申請にまつわる事務手続き」が、一般的な工事監理や、役所が発注する公共工事に比較して、請負金額の割に手間と時間がかかることで敬遠するからだと思います。ですが、手続きの簡略化を行うとしても、実際の施工内容の監理について簡略化することは、不正な工事を助長する結果につながりますので、そのレベルは非常に難しい課題なのかなと思います。

事前の調査をより厳密に行えばよいという声も聴きますが、少なくとも改修規模がはっきりしない段階で、住宅内部をあちこち壊して見て回ることは、お客様への負担も大きいですし、その調査と復旧のための費用もかかります。せいぜい天井裏にあがって目視してみる、床下にもぐって状況を探る、こんな程度の調査が限界です。サーモカメラなどでの温度分布を見ながら、躯体状況を予測することなども効果はありますが、それも無断熱の箇所では効果はありますが、そうでない場合は効果は低いです。

最近のお問い合わせで多いのは、工事期間や手続きに要する時間などです。工事期間は改修内容によって全く異なりますし、手続きについては、申請するための図面作成、数量表、見積金額などの資料が必要になります。以下の画像は、実際の耐震改修工事補助を受けるために提出した図面の「一部」です。


改修箇所の構造的な状況と、部屋に対しての復旧などの工事内容を説明できるだけの図面が必要になります。また、施工面積などが見積金額に連動している場合、例えば壁の改修面積で施工費を計上している場合などは、その面積根拠となる情報を記載しなければなりません。補助金は税金で賄われますので、年度末の会計検査などでも「補助金支出の妥当性」は審査されます。

したがって、どのくらいの期間が必要なのか?については、「調査結果による」というお答えしかできないわけです。

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