以前のブログテーマでも取り上げておりました、「完了検査を受けていない1/2超の増築の確認申請」ですが、この度、めでたく済証が発行されましたw
ポイントになるのは、1/2を超えることにより、「一切の緩和規定を用いることができない」ということです。例えば、現行法(2025年3月まで)において、木造2階建て住宅は面積制限はありますが、4号建築物ということによる審査事項の省略があります。いろいろありますが、その中でももっとも大きな緩和は「構造関係規定」と「耐久性規定」という2つの項目です。2つとはいえ、法律条文から言いますと、かなりの条項があり、これらを「仕様規定」と表現する場合もあります。
増改築の場合の法適合を楽にするやり方としては、既存建物の1/2以下に抑え、既存不適格に関する緩和規定といい、既存部分が古い建物で今の法律には合致してこない場合に、その部分を「既存不適格」として一定の面積以内であれば、その既存部分を現行法に準拠させることを求めないというものを利用することです。ですが、これでは大きく建て増しするようなことはできない時がありますので、結果として、すべてを取り壊して新築するという選択肢を取りざるを得ないということが多いです。

ですが、今回は、ご両親が住み続けながら隣で大きな増築工事を行うということが目的でありますので、なんとかして法適合を受ける必要があったわけですが、そのための方法としては、
①残る既存部分が現行法に適合していることを証明すること
②適合していない箇所は適合するように改修すること
の2つが絶対条件になるわけです。この「適合する」という部分で、緩和規定というのは実にありがたい存在で、緩和されることで対応しなければならない法律が少なくなるというわけですが、今回はそれがありませんwww さらに、建物全体の面積がかなり大きくなることで、住宅とは言え、防火避難規定への対応という新な課題もでてくるのですが、そういったことも含め、如何に法適合しているか?を示していくことが求められます。
例えばですが、現行法では基礎は鉄筋コンクリート造であることが求められています。相当古い家などで石場建ということで束石の上に柱を立てることで建築されていたりしますが、原則論としては現行法上の「仕様規定」では認めていません。ですが、それを認めさせるためには安全性を構造計算等で示すことになります。

基礎については一見コンクリート製であることはわかりますが、問題になるのは、鉄筋が入っているか?ということなのです。これについては超音波検査などで鉄筋の存在を面で探査しなければわかりません。金属反応を調べる機械などでよいわけですが、それがどのようなピッチになっているのか?ということを比較的高い精度で調べる必要があります。



一応、基礎がRC製だということをこの探査報告書でクリアしました。そして、実は最後まで問題になったのが「既存部と増改築部がエキスパンションにより相互に応力を伝達しない構造」という部分の判断です。




これは「TOPB-001」という認定番号を持つ構造方法なのですが、「全体計画認定」といわれる認定を行う際に持ち出されるものです。これがいわゆる「エキスパンションジョイント(以下、EXP.J)」といわれる構造で増築工事を可能にするというものなのですが、ここに「構造方法等の内容」というものがありまして、

という文言が記載されていて、事実上、EXP.Jの構造としての大原則とされています。一般的にEXP.Jといえば、構造を分離しておいて仕上げなどだけで接続されている状況だったり、ビルなどで廊下や壁、天井になにかカバーのようなものが取り付いていたりしますが、あれがEXP.Jというものです。

https://www.rikenkeikinzoku.co.jp/building/expjc/
これまで緩和規定がある場合には、ひとこと「EXP.J」と書けば、そのEXP.Jの仕様まで審査されることはなかったのですが、今回「緩和規定なし」ですので、この「EXP.J」がどのような納まりで、それが応力の伝達がなされない構造であるか?ということが審査されるわけです。木造の住宅で、一般的なビル建築のような高価なEXP.Jを採用するわけにもいきませんし、屋根部分の接続箇所などでは、四角い建物で常識的なEXP.Jを採用することはできませんので、「応力は伝わりません!」ということをなんとかして説明しなければなりません。ここが結構難儀いたしました。
特に、「エキスパンション部分の外壁仕上げ材の脱落」が問題になり、脱落しないことを示さねばなりません。そもそもEXP.Jはその部分が自由に動くことで建物の力の伝達を阻止するものですし、EXP.J部分がその動きによって変形や破損があるのはある意味、挙動としては思った通りなわけで、おかげで建物の損傷が少なくなるってわけです。ところが、エキスパンションジョイントは外装材の一部ですので、それ自体が「脱落しない」ことを「熊本地震」以降、明確に求められるようになりました。

というわけで、本日、無事、確認がおりました。ちなみに、今回、この確認申請がおりたことで、最終的に完了検査を受け合格し、「完了検査済証」が発行されますと、少なくとも、2025年3月現在の現行法に準拠しているということが認められますので、資産価値は大きくアップします。

また、4月以降の法改正には、審査外ではありますが、改正法で求められる構造仕様規定にも準拠させているという設計図書を添付しています。また、建物全体での省エネ計算結果も添付しておりますので、既存不適格となったあとでも、法適合していることを証明する手立てはしっかり打ってあります。
さて、確認もおりましたので、次からはいよいよ工事ということになります。半分壊して、半分残すというアクロバティックな工事をまた公開していきたいと思います♪