建築「確認」と建築「許可」の違い その3

その2に続きます。

その2までで、「確認」することと「許可」を受けることの違いなどを説明してきました。さて、今回は「許可」というものに焦点をあてて掘り下げたいと思います。実際の許可通知書の一部をご覧ください。

許可申請は、もちろん「どこのだれが」許可を受けるのか?ということが記載されます。そして、権限者はその「どこのだれか」に対して「許可」を出します。田んぼを埋め立てて分譲地にする場合には、土地を販売していく目的ということで審査されますが、田んぼを埋め立てて「工場」を建てる、「住宅」を建てるというような場合には、あくまでも建築物を建設し、その建築物を使って事業をおこなったり、生活したりすることが目的ですよね?つまり、許可の審査の場合も、この目的を遂行するにあたって公益性を著しく阻害しないか?というところが視点になります。

そして、ここで重要なのは「どこのだれ」がその建物運用していくのか?ということであって、許可は、

「どこのだれ」

に対して与えられるものです。実はこれがかなり重要であることを認識していない人は専門家と言われる人にも見受けられるのです。確かに、開発行為の申請はハードルが低くはありませんし、メンドクサイ資料を作らなければなりません。従って、申請手続き自体には一生懸命になりますが、許可が下りればこっちのもんwという感覚があるのは理解できます。でも、実際に許可を受ける人は、この許可書の左上に記名された「どこのだれ」なわけです。

何が言いたいか?というと、許可は、申請した「どこのだれ」に対して下りたものであって、「どこのだれ」かとは違う人がその建物を使うことは「許可していない」というわけです。これかなり重いことなのです。

例えば、市街化調整区域に住宅を建てました。許可も受けました。しばらくたって、もうそこに住みたくない!ということで、その建物を全然知らない人に売ってしまいました。こうなりますと、最初に許可を受けた方じゃない方がその建物(土地も含め)を使うわけですので、許可した人じゃない人が使うことになりますので、法律的に認められないというわけです。

また、工場などの場合、例えば、市街化調整区域で事業を始めた人が「代表取締役」を務める法人が許可を取って、しばらく事業を続けたけど、なんらかの事情で事業継続を断念し、他の法人に事業を譲った、あるいは売却したとなりますと、これも、許可を受けた法人ではないところが建物と土地の利用を始めるわけですから、法律的に認められないというわけです。

この場合、その建物と土地を手に入れる個人または法人が、再度、開発行為申請を行い許可をもらえばよいのですが、一応、特例的に「許可に基づく地位の承継」というものがあって、許可を受けたこと自体を届出だけ出すことによって引き継ぐこともできます。

ただし、この場合、全くの赤の他人には承継できません。個人の場合ですと、相続人であることが要件ですし、法人の場合には、その法人を吸収したり合併したりすることで運営される場合に限ります。言い換えますと、開発行為許可を引き継ぐことができるのは、個人であれば親族(それも相続人たる資格がある人)だし、法人であればその法人を何らかの形で承継するような組織でなければならないわけです。

ところがこのとき、デカい問題があるのです。例えば30年近く前に許可をもらって建築した建物が、全く現状と同じであればよいのですが、途中で増築していたりしますと、その増築などの時点で開発行為の変更申請などが行われていればよいですが、無届で増築しちゃったりしますと、もはや、再度の申請時点で「建物の法適合」を立証する術がありませんので、事実上、所有者の変更による開発行為申請は限りなく不可能に近い状況になってしまいます。

以前、経験したことは、Aという会社が開発行為によって建築した工場を、事業権も含めたBという会社が譲り受けたが、Aが開発行為許可検査後に、工場を増築しており、その際の建築計画について開発行為許可上の手続きを全く踏まえていないどころか、AからBにへの許可の承継届すら出ていない状況だったことが、Bの事業拡大のための店舗・工場の別棟新築計画の際に発覚し、もはや許可が受けられるような書類提出などできないということで計画を断念したということがありました。

前回のブログでも触れましたが、許可というのは、

「法律的にダメことを個別の事情で良いことにする」

手続きですので、許可を出したあとで「違う話」になっていたら、それはもう許可を取り消されることはだれもが想像できるはずなのですが、意外と甘く見ている方は世の中多いです。個人レベルの住宅であれば、ある程度やりようはありますが、法人の大規模な工場や店舗となりますと、許可要件と違う状況であればかなり難しい問題となります。

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