昨日行ってきた彦根城には博物館施設があるんですが、江戸時代の藩主が集めたお宝関係の収蔵や、歴史的な紹介などの建物と、木造建築物として建物そのものを保存、展示している「木造棟」というものがあるのですが、やはり建築に携わるものとしては、この「木造棟」については興味深いものではないかと思います。この「木造棟」を構成している部屋類は、来客への対応の部屋から藩主の日常生活の場も含めて当時の様子そのままで展示しているわけです。
部屋の設えも見事ですが、庭と部屋の関係なども「バランス」が見事なものです。大きくもなく小さくもなくな感じです。「和風な納まり」のすばらしさもありますが、外部の風景と室内環境との調和がとれているという部分では、こうした建物を作ってみたいという希望はあります。
室内の納まりも江戸時代といえ、その設えに工夫があるようです。一つ目の画像は「御座間」といって、日常的に使う部屋のようです。壁は土壁で塗りモノがされているようで単調な趣ですが、襖の唐紙についてはちょっと派手さが出ています。日常生活でリラックスできる雰囲気として採用された柄なんでしょうか。もう一方の画像は「御客座敷」といって、お招きしたお客様でも結構プライベートでも心を許すことができるような関係性のお客様をお招きする部屋のようです。でも、客間であることもあって、唐紙をシックなものにしています。
部屋にどのような方を通すか、また、どのような状況で使うか?で、設えをかえているわけですが、それを土壁の色などで変えるのではなく、襖の唐紙で変化を持たせてるというところがなんとなく「おしゃれ」だなと感じました。今なら、カーテンなどで変化を持たせるという感覚でしょうか?
そんな「木造棟」ですが、ちょっと気になったことが・・・・
壁をご覧ください。斜めの材料の跡が見えます。如何にも「筋交い」なわけですが、なぜ筋交いの跡が見えるのか?というのがちょっと謎です。復元修復で補強のために入れた筋交いが、土壁の湿度などの変化での経年変化で跡が現れたのかな?とも思いますが、真偽のほどはわかりません。
このような武家屋敷などの古い木造建築は、お城同様、権力やその所有者の立場などを如実に表しています。特に客間の存在は、室内の状況だけではなく、そこから見える外の景色、庭の風情なども関係して、お客様を歓待できるような雰囲気をつくるようにしているわけで、単に、プライベートとパブリックなスペースを分けているわけではありません。おそらく当時は、政治的、権力的な駆け引きなども「客間」で行われることになるわけで、建物内外部の環境によって、そういった交渉や協議が上手くいくようなつくりを心掛けたのかなと思います。