お客様の建物を考える上で土地の状況を掴むことは重要ですが、敷地の形状だけではなく、「地籍」というものが重要だったりします。一般的な分譲地ではほとんど土地の形状が一つの地籍という感じになってますが、古くからある家が建っている土地などは、いくつかの地籍が集まって敷地を構成していたりします。この土地の地籍の「区割り」が明らかにされているものを「公図」とか「地図」(以下、公図)と言います。
この公図ですが、地積測量図という土地の境界点をはっきりと明示されているものを測って作った図面ではなく、大まかな区画としての図面です。もちろん、地積測量図ではっきりと土地の形状が確定されている場合には、その縮尺を小さくすることで広域にすることになりますが、地積測量図がない土地に関しては過去の記録などから形状をある程度の誤差を含んだ形で示すことになります。
建築のご相談を受けた場合、特に、既存の建物を取り壊し新築するなどの場合には、所有されている土地の所有権を確認すると同時にある程度の土地の形状が現況と合うかの確認も行いますが、都度、法務局で「公図」を取得することがこれまでのやり方でした。これが意外とメンドクサイのです。
法務局に出向いての作業になりますし、最近ではネットから利用申込をすることで、クレジットカードで手数料を支払って公図や登記情報を取得することになります。ちょっと調べるだけで、地籍が多く、字をまたがったりするとすぐに千円、二千円とお金ばかりかかります。これらの土地の情報は、登記は別として、地籍の存在は、イマドキ、データとして法務局で管理されているものが大半ですので、単に、公図をとりたければデータを見せてくれればいいのにと思うことがしばしばありますw
ところが、国全体が法的制度のデジタル化の方向性が進み、「G空間情報センター」というサイトもできあがっています。
このサイトには官民から集められたサービスや調査結果などのデータが公開されているのですが、その中に、
「法務省登記所備付地図データ」
というものがあります。
この地図データは、登記上の地図ということで、いわゆる「公図」のことですが、このデータが公開されていることで、ご相談を受けた建物や土地に対して、単独の地籍であるか、あるいは、複数の地籍が集合しているか?などの下調べができるのです。しかも無料です。ここで公開されているデータは、XMLのデータや、二次利用しやすいGeoJSON形式のデータなどで、これをソフトで読み込んで加工するわけです。
ソフトは、「QGIS」というものがあり、これを使うことで、グーグルマップの航空写真と地籍を重ね合わせてみることもできます。
例えば、以下は弊社が在る場所のグーグルマップでの航空写真です。これをQGISで読み込んで表示させた状況です。

「法務省登記所備付地図データ」で公開されている「福井市」の地図(公図)データを読み込みますと、こんな感じです。

黒い線が引かれているのが土地の「だいたい」の形状が示されているわけです。このデータの座標と、Googleの航空写真のデータは一致していますし、縮尺的なものを一致しているので、この2つのデータを重ねますと・・・

こんな感じで確認できます。弊社の存在する土地は複数の地籍から構成されていることもわかります。
ただし、このデータを印刷したとしても、証明書として利用することはできません。あくまでも参考資料でしかありませんが、情報を即座に手に入れ、提案や対策などを具体的な情報を元に打合せなどができるのは非常に便利です。そして、ここまでに使ったデータやソフトすべて無料であるというところも重要です。
ちなみに、災害関係のデータも公開されていますので、それを重ね合わせることで購入しようとしている土地や、今、所有している土地の災害リスクなども検討することもできるようです。国としてはデジタル庁まで発足させたわけですので、マイナンバーカードだけでなく、これらの地図情報などの活用も進めてほしいものです。