確認申請・審査マニュアル改訂資料

前回のブログテーマでは「1年間の経過措置」を決め、

 壁量(令第46 条。枠組壁工法等を含む。)
 柱の小径(令第43 条)

に関しての構造仕様の審査について、改正法への適合を改正前の基準や仕様を用いることができるようにしたということを取り上げました。通達文書やマニュアルなどをしっかり読んでいただければわかると思いますが、「審査しない」というわけではなく、「審査基準を改正前基準としても構わない」と言っているだけなんですが、改正法への適合が難しいということは、おそらく改正前の基準に対しても同条項を評価した経験がないので適合することが難しいというロジックがあるわけです。

この壁量と柱の小径に対する適合評価で、改正前と改正後で何が違うか?と言えば、改正前は建物重量に対する評価が単に「重い屋根」「軽い屋根」という区分でしかないものが、改正後に比較的細かな建築仕様によって重量が簡易的に割り出され、それに応じた係数が決定されるというプロセスが加わっただけで、評価方法が変わったわけではありません。こんな事に「対応が難しい」となるケースがどのようなことがあるのか?ということは、正直、理解ができません。

また、建築仕様をある程度細かく判断することや、階高などの高さの影響をしっかりみることで、ある程度、要求される壁量などが「少なくなるケース」があるわけですので、改正法に対応したほうが構造的に合法的に壁量を落とすことができるわけですので、構造計算まで行わないような設計者にとってはむしろウェルカムな話しなはずです。しかも、経過措置で対応できるのは、壁量と柱の小径の2つのことでしかありませんので、「経過措置を使わなければならない」時というのは、よほど設計者に技量がない、経験がないという位置づけになるのではというのが個人的な感想です。

さて、そんな改正基準法ですが、今回その制定が令和4年(2022年)6月制定ですので、もはや3年近く経過しようとしています。その間、国交省も全国的に研修会を開催して内容の周知と、サルでもわかるツールの公開など、建築士の技能底上げに必死で取り組んできました。以下は、2023年から始まった全国研修会で配布されたマニュアル資料ですが、2024年中までに2回も改訂され、最終的には2024年11月第3版が現時点での最新のものです。

初版からこのマニュアルを保管しているという方は少ないかもということで、都度、PDFでダウンロードしておいたものを弊社のクラウドサーバ上で公開することとしました。

改正建築基準法 2階建ての木造一戸建て住宅( 軸組構法)等の確認申請・審査マニュアル

改正建築基準法 2階建ての木造一戸建て住宅( 軸組構法)等の確認申請・審査マニュアル 2024年9月第2版

改正建築基準法 2階建ての木造一戸建て住宅( 軸組構法)等の確認申請・審査マニュアル 2024年11月第3版

さて、第3版で一応落ち着いたわけですが、以前、ブログテーマでもご紹介しました、「N値計算の方法の変更」は、第2版で、これまたしれっと記載があったわけですが、

2.7/Hという補正項を掛け算するというものが、第3版では、「横架材上端距離が3.2m以下の場合には、H=2.7とする」というただし書きが付くようになりましたwww

改正基準法の運用にあたっては、様々な意見が出てきて、結果として運用基準を後出しのように変更していったわけですが、その意見の大半の裏に隠されていることは、やはり、これまでの設計において住宅などの4号建築物に対する「審査緩和」にあぐらをかいてきた一部の能力不足の建築士や設計事務所による影響が大きく、「4号では構造を吟味する必要がない」といわんばかりの設計業務の状況が今日の混乱を招いていると感じています。

そして大きな問題はもう一つ、建築の設計を依頼される建築主の方、つまり、お客様方がこの「建築士の能力の問題」について知らないことなのです。不良施工や欠陥施工を問題にする話題は多いですが、そもそも、設計に欠陥があることや、それが、あなたの住宅でもあるかもしれない、という事実がこれまでの法律の運用上に隠された問題として存在していることを知ってほしいです。

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