福井新聞での耐震診断の記事

今朝の福井新聞で「住宅耐震診断」のことが取り上げられていました。福井の県議会で細川かをり先生が「耐震化促進についての県の方針」について質問されたようです。

福井新聞 令和6年12月13日紙面

年初の能登地震の影響を受けて、結構な揺れを感じた福井県北部では「耐震性に関する問い合わせ」が急増し、その中でも、旧耐震基準の住宅の「耐震化」という部分では不安感もあって相談が相次ぎました。これを受け福井県では、耐震関係の補助金予算を増額し、各市町を窓口とした「耐震診断・補強プラン作成事業」を拡大したこと、さらに、改修工事に対する補助金額及び補助率を最大150万円、100%まで増額したことで対応をしました。

その結果、「耐震診断・補強プラン作成事業」については、福井市では無料で、その他の市町では最大1万円の自己負担で行えるようなりました。特に福井市では無料ということもあって、診断の申込が爆増し、希望者を抽選して順次対応することになったわけです。これを行政側やメディアは「耐震性に対する関心度のアップ」と捉えられていますが、現場に臨むものとしての肌感はちょっと違います。

確かに関心度がアップしたという点では関心がなければ申込みませんので、その文言だけ取り上げれば報道通りかもしれません。ですが、そこには「無料である」という部分が大きな理由となっていることは否めません。事実、耐震関係の補助金事業は、能登地震以前から展開されており、弊社でも毎年数軒の調査を依頼をこなしていたわけです。つまり、本当に関心がある方の大半は、すでに、調査の依頼を行い、結果を手にしているというのが率直な感想です。言い換えれば、今年の申込者の爆増は単に「無料」という部分の触れ込みが影響しているのでは?と感じている次第です。

その結果、抽選になったことで、本当に改修を考えている方が、診断と補強プランの補助金を受けることができない事例が多発し、診断関係の補助金は受けずに改修工事の補助から入るという形をとりざるを得ない方が出てきています。

また、補助金事業は「耐震診断・補強プラン作成補助事業」と「耐震改修工事補助事業」とは、全く別物です。ですが、「耐震診断・補強プラン作成補助事業」を受けたものでなければ「耐震改修工事補助事業」での補助金が使えないとの誤解もあるようです。

弊社では今年度、4軒の耐震改修工事をお請けしておりますが、うち2軒は、以前に耐震診断・補強プラン作成補助事業を受けている物件です。年初の能登地震を受けて、かなりの揺れに不安を感じ「改修」を決意された方々です。また、1軒は耐震診断・補強プラン作成補助事業の抽選に外れ続け、もはやその部分は自己負担でかまわないので「改修補助を受ける」ことを前提に工事のご依頼をされた方です。さらに、改修の補助金枠はすでになくなっていますので、来年度予算での申請見込みがすでに4軒ございます。

県が施策として「住宅耐震化率の向上」を目論むのであれば、診断や補強プランへの補助金事業を改修を含めた形で制度を変えるべきだと思います。これまでのブログテーマでも扱ってきましたが、旧耐震基準が施行されていた時期の住宅が、現在の耐震基準をクリアすることは、まず、100%の確率でありえません。少なくとも積雪荷重を加味して設計なされていない建物の場合、1mの積雪荷重を考慮して診断する耐震診断をクリアすることはないのです。

耐震診断は、耐震性のレベルを評価することが目的ではありません。改修するための基礎調査であるという認識を持つべきなのです。つまり、補助事業として、とりあえず診断を行ってみては?などというアプローチは、税金の無駄遣いでしかないということです。福井新聞での記事でも、耐震診断の申込み数は512軒とありますが、その大半は改修に至らない理由は、単に、無料だったり、極々少額の負担で「お試し感覚」で申込が増えている結果だということです。

この点を行政側でも認識してほしいところだと主張します。



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