耐震改修を計画するときに重要なのは「新たに耐力壁をつくる場所」なのですが、木造住宅耐震診断士の中には意外と見落としがあります。言い換えれば「壁のところはどこにでも耐力壁がつくれる」と思っている方が多いということです。
以前のブログテーマでも取り上げましたが、耐力壁になりうる壁は、両端に柱があることもさることながら、1階なら基礎+土台(最悪の場合、土台のみでも)と2階の梁、2階なら2階の床の梁と屋根部分の梁が必要です。
こうならない壁を耐力壁として算入してしまうと、想定してたよりも耐震性はおちますし、また、補強プランにおいては、耐力壁として評価できない壁ですので、どんなに筋交いをいれようが、合板を張ろうが、全く意味がない壁になってしまいます。
このため、改修前の最終的チェックでは、想定している耐力壁が想定通りになっているか?というのを可能な限り調査して、ほぼ確定させる必要があります。それでも、これまでのブログテーマでも取り上げました、たすき掛けの筋交いの問題なども残りますので、まるっきり壁をとっぱらうことができない状態での調査は限界があるわけです。
さて、今回の耐震改修はそうした改修前の調査で、柱が梁に到達していない、いわゆる「なんちゃって柱」が確認されていたのですが、どうしても建物の構造上、その部分になんとか耐力壁を作り上げる必要があり、その作業を行いいました。
イマドキ、こんな柱や梁の組み方をする人はいないとは思いますが、今でこそ「間仕切り壁を作る」場合には、その壁の重量を意識して、しっかりと柱の頭をつないでいくというのが基本でありますが、昭和中期からの住宅では、壁をつくることと床などの構造を支えることをリンクさせて考えるということはあまりなかったようで、特に和室の柱というのは「意匠」的な役割のほうが大きい存在だったかもしれません。
今では金物も便利なものができて、既存の梁に梁を掛けるための金物もあり、梁の追加は意外と楽になってきています。それでも狭いところへ重量のある梁を持ち上げますので、大工さんの作業はたいへんです。
画像で、白っぽい梁が今回追加した梁ですが、無事作業が完了しました。新耐震とか旧耐震などと言われますが、住宅建築でこのような梁の省略がなく、ほぼ間仕切り壁の部分には梁が入るといった構造を当たり前にするようになったのが、新耐震以降の住宅建築なわけで、実際、その部分だけでも耐震性に寄与しているといえます。