もうすぐ年度末ですが、今年度分の耐震改修補助の締めに向け急ピッチで作業中です。もう無理といいながら補助金枠がある分は全部使おうということで、希望されるお客様には「順番」にご案内させていただき、補助事業として施工を行っています。来年度も今年度並み、いや、それ以上の数の対応に迫られると推測していますが、すでに4物件ほど耐震改修案件を待っていただいているのが現状です。
さて、耐震改修を行う場合、部分的に壁や天井を壊して金物などの取り付けや、抜本的な筋交いの追加などを行います。その際、できるだけ仕上げの安価な部分を選択しながら補強計画を立てるわけですが、どうしても強烈な仕上げの部分に手を掛ける必要に迫られることもあります。
ですが、それでもコスト意識をしっかりと持たないとやたらと高い仕上げ材を使い、結果としてお客様にコスト面で無理を強いることになります。いくら補助金が出るからといって、現在補助率100%なわけですから、持ち出しになる金額は抑えて差し上げる必要があります。となりますと、復旧にかかるコストを重視することが一番なのですが、今回は大きな山にぶち当たりました。
こちらの画像をご覧ください。


昭和50年代にはよく流行った「応接室」の設えです。今のようにクロス張りが主流ではなく、デザインされた合板(プリント板)が流行った時代です。いつの時代もコスト意識があるので、できるだけ安価で豪華に見えるものということで、プリント板は多用されました。この画像の奥の部分ですが、木片をブロック状に乱張りしているように見えますが、実際には、「銘木合板」と言われるものでこのようなデザインされた凹凸をもったプリント板が販売されていた時期があるのです。
さて、この部分を全体改修の計画の中でどうしても手を加えなければいけませんでした。ですが、復旧となると、このようなデザインの銘木合板はすでに販売されているところはありません。いろいろ探しましたが、ブロック調のものはなく、せいぜい、横目地の板柄だったりでした。
耐震改修を行う上で、復旧は二の次という考えがないわけではありません。古い住宅ですから特段仕上げにこだわらないというお客様も多いわけで、今回の場合もクロスで仕上げてしまえば何の苦労もありません。ですが、ちょっと待ってください。
耐震改修を行う目的は、古くとも今の建物を使い続けたいという部分で、安全性をできるだけ担保したいということのはずです。安全性をアップさせることは第一の目的ですが、そのために居住性を損なうような施工は正直、どうかと思います。弊社ではできるだけ押入とか納戸とか洋間でも普段使いの部屋などを重点的に改修エリアとして耐力壁を増強します。単なるプリント板の洋間や廊下であれば、それがクロスに変わっても特段違和感がないかもしれません。まして押入などではベニヤ板を張りっぱにしても問題ないでしょう。でも、今回のような「応接室」でそれなりに思い出がある部屋の場合、そう簡単に割り切れるものではないと思うのです。お客様は、「無理だったら別にいいのよ」とおっしゃってくださいましたが、これをお客様が仕様が変わってもよいと承諾したとは取らないのが私ですwww きっと、心の中では「元の通りになるといいなぁ」と思っていらっしゃると考えます。
というわけで、解体と補強開始です。


弊社の大工さんはもはや経験値を随分蓄積したので、天井については筋交いを差し込めればいいだけの解体しかしなくなりましたw クロスの天井仕上げであれば壊してないところは剥がして張りなおせばよいわけです。断熱材入ってなかったので、断熱材いれての復旧です。構造用合板を上張りすることでさらに強度をアップさせます。



ここで仕上げですが、普通であれば、クロス下地としての石膏ボードをはって、クロスで仕上げるという感覚ですが、弊社の大工さんと相談して以前のような木肌のモリモリしてるような板材がないか?を物色に銘木屋さんに直接行ってみてきましたw
福井では銘木店と言えば、「山田銘木店」一択ですw おそらく和風造作材を求めるのであればこの店で物色するのが一番早いです。
ここの倉庫はまさに宝の山ですw そして、格天井の天井板に使う欅の合板を発見!格天井というのはこんな感じの天井です。

この板の部分をみると、杢目の強い板が使われていますが、これが合板のものがあって比較的安価です。3尺×6尺で1万円しません。それを7枚ほど購入しました。ある程度同じ大きさで切りそろえてタイルを作って張ることを想定していたのですが、なんと弊社の大工さんは、壁面をすべて測って、どこにどの大きさのタイルがあったのか?を記録していたのです!w マジか!と思いました。
そして、復旧しはじめましたが・・・・ 張り上がりですw


欅ですw この状態でもすごく高級感あるんですが、この段階でお客様はすごくご満足されました。でも、これでは終わりませんw 今度は塗装屋さんに相談して、元々張ってあった銘木合板を一部取っておいて、色合わせをしてもらいましたw そして塗装完了!


杢の塗料の吸い込みの違いはあるものの、意外とイイ感じです!お客様からは「最初からこうだったと思えるw」とご評価いただきました。
確かにこのような仕上げをあちこちやるととてもコストが上がりますが、ピンポイントで拘るのは耐震改修を行う上でも必要だとおもいます。