耐震改修で出くわすアルアル#5

アルアルシリーズですw 耐震診断の調査で現場に行って目にするのは、御神楽(おかぐら)による増築行為がなされている現場です。御神楽(おかぐら)建築っていうのは、平屋建ての部分の屋根を解体して、そこに2階を作るというものです。大昔からある改造方法ですので、最近になって考えられたものではありません。

まだ住宅建築がお手軽にできなかった時代に、最初に新築した建物に対して家族が増えるなどの理由で部屋を増設しなければならなくなったときに、下屋(1階の屋根部分)に部屋を作ることで、できるだけコストを抑えた増築を行うという視点から多用されています。

御神楽は建築手法としてまずい建物か?と言えば、在来木造のフレキシブルな対応が可能という利点を余すところなく引き出しているわけで、ちゃんと考えて建てるのであれば問題はない、といいたいところですが、寺社仏閣などであればいざ知らず、おおよそ町内(まちうち)で執り行われるような建築では、単に「2階を増やす」という目的のために簡単に作っちゃうところがあります。従って、そのほとんどは、耐震性はもちろん、床という荷重を受ける部分への配慮や、その上の屋根や屋根にのる雪のことまで考えて作っているとはとても言えないものばかりです。

御神楽建築の場合重要なのは、増築する2階の柱にかかる力が確実に1階の柱に伝達できるようにつくる、というところにありますが、そんなに都合のよい間取りではないことばかりですので、1階の天井裏にある梁に2階の柱を立てていき、立てた柱位置の下には柱がない、文字通りの「御神楽」になることが多いです。

画像は典型的な御神楽事例です。1階の屋根がずいぶん奥のほうまで伸びています。元々は道路側に向いて大きな下屋になっていたのでしょうが、その一部分に2階を作ったという事例です。この画像の場合は、まだ幾分マシで、一応、2階の柱からの力をしっかりと1階に伝えるように柱位置を揃えてありました。

御神楽にすると「通し柱がないから構造的に脆弱だ」という方がいますが、通し柱がないから脆弱になるか?と言えば、そうではありません。問題は御神楽で作った2階の屋根からの力をしっかり1階に伝達し、基礎まで到達させることができるのか?ということが問題なのです。御神楽がまずいのは、この柱の連続性が担保できない、考えられていないから、結果として梁がその荷重を梁を支える別の柱に伝達する結果になり、その荷重による影響がしっかりと梁が担保できているのか?ということを「評価できていない」ことが問題なのです。

また、当然、床面積が増えるということは、それだけ荷物を積載することができるわけで、建物の重量が増加します。その増加した重さの分の横揺れの際影響する力に抵抗できる耐力壁があるのか?という部分で、なんの評価もしていない御神楽建築が多いということなのです。

それでも、冒頭でも書いた通り、昔々、住宅ローンなど使わずに、自己資金だけでお建てになった住宅なわけですので、家族構成などの変化で増床が必要になればそれなりの手当てをしていたわけですので、そこをもって御神楽を悪のような言い方をするつもりは毛頭ありません。

どちらかというと、このような御神楽になっていても、耐震性を担保できるような改修の工夫が大事であり、それを考えるのが耐震診断士の役目だと思います。

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