見えない壁の中を推測する

本日も耐震診断でしたw 福井市では現状では新規の診断申込を中止し、昨年度にできなかった診断希望者さんへの対応を行っています。昨年度は抽選となり、複数回の抽選で外れてしまわれた方を今年度のはじめに対応するということで、「全部取りこぼしがないように!」という市の考えです。数にすると200軒あまりありますが、これを市内の耐震診断士で1軒1軒対応していくというわけですが、新規の申込が7月から再開ということで、6月いっぱいである程度の取りこぼし案件を対応していくということで、弊社でも4月から相当数の調査を行っております。

さて、調査のときに重要なのは、壁の配置などをベースとする間取りの調査と図面復元ということになりますが、実は、それはあくまでも基本中の基本、1丁目1番地でしかありません。そこで得た情報を元に、耐力壁として評価できる壁はどこか?またその壁に筋交いなどが入っているか?といった、「壁の中」の状況を掴むことが本来の目的です。もちろん、筋交いだけではなく、正角の柱がしっかり配置されているのか?といったことも確認していく必要があります。また、柱の確認は、和室であれば真壁造りになっていれば柱の位置ははっきりしますが、大壁の部分は類推していくか、建築時の確認申請図面などを参考にするしかありません。

そこで、6月なのに一段と暑さが厳しい日でしたので、ちょっと秘密兵器を使ってみましたw

「BLACKVIEW」という海外のスマホメーカーのもので、「BV9900PRO」という機種です。これ、スマホのカメラがすでに、FLIRの「サーモグラフィーカメラ」になってるものです。別のアタッチメントをつけてスマホをサーモカメラにするものとは違います。

実は実験などでは、相当前に購入したもので型は古いのですが、日本アビオニクスの「InfReC G100」を測定器として使っています。

言いにくい話しですが、サーモカメラの良し悪しはほぼ「金額」で決まります。高いカメラは測定精度もかなり変わります。でも、このアビオニクス製のものはハンディタイプと言いながら大きさもあるので、耐震診断での使い勝手は悪いかもしれません。なので、これまで積極的にサーモカメラで壁を見るということはしてこなかったのです。

また、サーモカメラは壁の温度を測り、その温度差を見ることで中の構造を類推するというわけですので、温度ムラができてくれないとはっきりしないのです。ですので、季節的には暑い時期か、寒くても室内は暖かいなどの「寒暖差」がないとダメです。また、断熱材がしっかりはいってるとわかりませんwww 断熱性能がある程度の耐震診断はサーモカメラでははっきりわからんというわけです。

というわけでやってみましたw 今回は、住宅金融公庫利用の昭和51年築の住宅です。

図面も残っており、公庫ということで審査もある程度信ぴょう性が高いと判断できますので、図面記載位置に筋交いがあるか?の確認がある程度できればと判断しました。なお、画像は当時の図面の一部ですが、筋交い位置に「×」がついています。このまま読みますと、イマドキの若い設計士の方は、筋交いがダブルで入っていると思われるかもですが、当時の筋交いの記載方法は、「×」はシングルを指すことが一般的で、ダブルの場合には「×」の真ん中に縦線が入るのですw

では、その部分の実際を見てみましょう。図面画像の赤枠の部分です。

これをサーモカメラで撮影すると・・・・

地球儀の上ぶ、斜めになって温度が低い部分があります。これはおそらく筋交いなんですw 柱の位置もおおよそ1間のところに温度変化があるので、当時の図面の記載内容は結構信ぴょう性があるとみることができます。

また、別の箇所ですが、階段吹抜け部分に窓があります。

この窓の画像左手に壁があるかないかで、耐震診断上の壁の扱いが変わります。画像左から右の階段吹抜けに柱が一本もなければ、現況から判断すると、この面は「窓開口」という扱いになります。

ところが当時の図面では、窓はありませんwww おそらく、現場で「暗い!」ということで急遽変更したと思われますが、窓の左横に柱がないとは言い切れません。ということで、サーモカメラで撮影しますと、

画像を見ると何となく柱があるように見えませんか?www ちょっと画像処理を行って、ハイコントラストにしてみると・・・・

間柱と判断するには温度分布が広いと思いませんか?w 画面を離してみるとなおさら感じると思います。というわけで、ここには柱があると判断しました。言い換えますと、「壁」+「窓」であるというわけです。

調査の精度を上げるためには、こうした計測器を工夫しながら使っていくことも必要なのです。

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