建築で「構造」については吟味される方が多いですし、最近ですと「省エネ性能設計」について吟味される方も多いです。ですが「設備設計」という側面ではどうか?というと、設備機器そのものの採用検討などは、省エネ性能も含めての検討がなされ、機器選定を行うことはあっても、その機器への配線や配管などの設備への出入りについての経路(ルート)を設計し吟味するという方は、こと住宅に至っては非常に少ないと感じています。特に、給排水設備については顕著で、現場ではじめて水道屋さんが排水、給水給湯配管の経路を考えるというような状態だったりします。
この配管経路が、構造と一体として計画しないと、基礎への貫通穴を応力が集中するようなところに通されたり、そもそも、納まりがつかない場所に設備機器を設置されるような計画になってたりと、結果として、現場での設置位置の変更などが必要になったりします。
結果として、梁を切り欠くとか、土台を切り欠くなどの構造に手を加えることが現場に必要になり、監理者(設計士)の承認なしに施工が行われることが横行します。正直いいまして、納まりの利かない設計計画を行う設計士の責任は大きく、ビルや工場などの大規模な建築ならいざ知らず、住宅レベルでの設備のルートを計画できないというのは、致命的な能力不足だと考えています。
特に2階への排水管、給水給湯菅のルートは、2階にトイレや洗面をつけることが一般的になっている現状では、このルートをどのようにとるのか?というのは非常に重要で、法的な高さ制限があるけれど天井を高くしたい場合など、天井と2階の構造との空隙が通常より狭い場合などは、よほど吟味したルートの設計しない限り、後々問題が発生する確率が高くなります。また、2世帯住宅などで、2階部分にも浴室、トイレ、台所、洗面所などの水廻りが完全に存在する場合などは、排水される流量も大きく、また、給水管、給湯管の配置も1階同等あるわけですので、さらに重要度は増します。
このような上階へのルートを確保するための設計の基本は、PS(パイプシャフトスペース)という配管だけが通るスペースを確保することにありますが、非住宅の設計などを日ごろから行ってる設計士は「当たり前」の設計要素ではありますが、住宅の設計の場合、さほど大きな配管が必要なかったりすることもあって、壁の中にいれてしまうことで対応するとして、PSの位置を水道屋さん任せにする傾向があるわけです。
住宅設備の高度化に従って、建築設計において「意匠」や「構造」を重視する以前に、要望される「設備」に対しての施工面での知識の重要度が増してきているのです。