あんまりこんなことを疑問に思うこともないかもしれませんが、住宅にしろ非住宅にしろ、階段をかけて上階にあがったところがホール状態になって、階段自体が吹き抜けになったり、あるいはその並びで吹き抜けになったりしますが、その吹き抜ける部分には必ず「手摺壁」を設置しますよね? そしてその手摺壁の高さというのが結構高かったりもするわけですが、それって建築基準法の何が影響しているのか?っていうことを考えたことがありますか?w

たぶん、階段廻りの設計図面を書いたとき、もはや、平面図に「階段手摺」という文言と、吹き抜け状になる階段室廻りの壁に「腰壁FL+1100」とか「腰壁H1.1m」とかの文言を書き入れるのはテッパンだと思います。
まず階段手摺は、建築基準法施行令第25条にまんま「つけとけよ?」という文言の記載がありますw
◎建築基準法施行令
(階段等の手すり等)
第二十五条 階段には、手すりを設けなければならない。
では、吹き抜け状になる部分の腰壁をわざわざ「FL+1100」とかの記載が必要で、かつ、そのようにつくらなければならないというのは、なんの根拠からなんでしょうか? 実は、前述した階段手摺ほど、まんま表現されている法文ってのはないんですw まんまではないですが、それなりに表現されている法文としてはこれがあります。
◎建築基準法施行令
(屋上広場等)
第百二十六条 屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。
ここからがややこしいところなんですが、この法文だけ読みますと、高さが1.1m以上の手すり壁、柵又は金網を設けなければならないのは、
・屋上広場
・二階以上の階にあるバルコニー
・その他これに類するものの
の「周囲」ということになりますが、これって、すべて屋外の話しで階段ホールなんかの屋内部分でなんで法律に抵触するってなるの?って思いませんか?w これ実は、法律とは別で運用基準としては明確に記載がある内容です。その記載は「建築物の防火避難規定の解説」という日本建築行政会議(編集)の図書に記載があるのです。
ちなみに、この図書は法規制運用上のバイブルとして存在しているような図書ですので、設計者としては絶対にもっていて損はない図書です。もしかすると怒られるかもしれませんが、その階段ホールの手すり廻りの記載ページを抜粋しますと、

という形で記載があります。ポイントは、「バルコニーその他これに類するもの」という表現についての説明で、「主として避難施設及び避難経路の部分である階段の踊り場及び吹抜けに面した廊下等を対象とするものであり」と記載されています。この一文をもって、先ほど例に挙げた平面図に、手摺壁の高さの記載が必要であるということになります。
ですが、よく読んでほしいのは「主として避難施設及び避難経路の部分」という部分です。住宅の場合、避難経路などを意識することはほとんどないとは思いますが、2階の寝室や子供部屋にいるときにそこから避難するためには階段を使って1階におります。2階から滑り台なんかで脱出するなんてことはないですよね?w
つまり、住宅の場合でも法律的には、2階の「居室」が面する廊下、ホールはもちろん、階段についても避難上重要な経路になるというわけです。従って、階段ホールはこの施行令第126条で規制を受けるということになるのです。
でも~、さらによく読んでほしいのですが、「2階以上のすべての部分に適用されるわけではない」とされています。避難経路にある部分ですので、そうでないところまで、この腰壁1.1mのルールに縛られることはないのです。例えば、子供部屋なんかでつける「ロフト」の手すりなんかはそうです。元々、ロフト自体は1.4mの天井高さ制限がありますので、そこに1.1mの手摺壁なんかをつけるわけにはいきませんし、ロフトでないとしても居室でなければ避難経路としての縛りを受けることはありませんので、階段登ったら物置なんかですと、この腰壁の規制は受けないってわけです。



まぁ、法律に縛られるってのはちょっとシャクな感じもしますけど、避難とか安全性の観点からのルールですので、そのあたりはしっかり踏襲してカッコいい間取りを作り上げるべきだと思います♪