雪国での耐震等級3

雪国(多雪地域)での設計で耐震等級3を目指すというのは、如何に積雪荷重を構造的に交わしていくか?というところが重要な課題になります。そもそも耐震等級3というのは、地域的な特性(積雪や風)を考慮した上で、基準法想定の地震力の1.5倍の地震力が加わったとしても倒壊しないとい雪国(多雪地域)での設計で耐震等級3を目指すというのは、如何に積雪荷重を構造的に交わしていくか?というところが重要な課題になります。

そもそも耐震等級3というのは、地域的な特性(積雪や風)を考慮した上で、基準法想定の地震力の1.5倍の地震力が加わったとしても倒壊しないという構造的な耐力を求められますが、これを単に「筋交いなどの耐力壁量を1.5倍とする」だけで対応できると考えている人や、そういう言葉でお客様に説明している自称専門家もいますが、全くもって違います。そういう方たちは「耐震等級3相当」という謎の言葉を使って、如何にも耐震性の高い建物であるかのうようなイメージを植え付けます。「耐震等級3相当」などという言葉を使う業者や設計者は信用に値しないとお考えいただいたほうがよいかもしれません。

さて、福井県は多雪地域でありますが、設計における積雪荷重の扱いについては、「県条例」で定めがあります。


◎福井県積雪荷重等指導基準および運用方針


◎構造計算における荷重・外力(積雪荷重、風圧力)について


まず、雪の重さの単位重量は、積雪1cmあたり、

 30N/㎡/cm以上

とされています。N(ニュートン)というとわかりにくいかもですが、kgに換算しますと、1cmあたり約3kg程度です。これを「建築基準法施行令第86条に基づく垂直積雪量」として定められている積雪量分が屋根に載っているものとして設計するというのがルールです。ちなみに、福井市内域では大半が「2m」となっています。ですが、住宅の場合は、雪下ろしを考慮して1mとして設計することが認められています。

1mの積雪として設計する場合、上記の単位重量から考えますと、1㎡あたり3000N/㎡、つまり約300kg/㎡の重量を屋根にかけて上で設計するということが求められます。ところが、福井県ではさらに強烈な条件をつけています。県外の設計士の方からは「悪魔の条例」と言われることが多いのですがwww


一般的に、積雪荷重というのは短期に作用する荷重であり、長期荷重としては3割低減して設計するわけなのですが、福井県では、長期荷重として積雪荷重を評価する場合、3割低減を認めておりません。画像赤字で、

 G+P+1.0S

と記載があるように、「積雪荷重を100%長期荷重として評価する」という条例となっています。これは豪雪などで「根雪」になりがちな地域であることと、福井地震という過去の大震災を経験していることからくるものであると理解しています。したがって、住宅の場合であれば1mの積雪考慮でまだなんとかなりますが、非住宅の場合には2m、6000N/㎡(約600kg/㎡)を考慮するという設計者泣かせの地域条件となります。

さて、能登地震を受け、また、南海トラフ巨大地震の発生も懸念される中、震源域が近ければ想定される震度は大きくなります。特に能登地震の際には福井県北部は震源に近かったこともあって、福井地震以来最大級の揺れを観測し、未経験な揺れにたいへんな不安を感じた方も多いです。

また、被災したあとのことを考えた場合、住宅に住み続けることができず、避難所生活を強いられ、また、倒壊等により仮設住宅への入居が必要になるなど、生活基盤としての「住宅」が、倒壊せずとも使えなくなるという状態に陥ることが、生活レベルですさまじい悪影響があるということはもはや皆さんが理解していることと思います。つまり、少なくとも、これから住宅建築を考える上では、倒壊を免れるということだけではなく、「使い続けることができる」という視点での建物設計が重要であると思います。

というわけで、現在ご相談をお受けしている住宅を「耐震等級3」に対応した設計としてみました。

構造状況を3次元で見ることができるように以下にデータをアップしています。そのままブラウザでごらんいただけると思います。

設計条件は、

 積雪荷重 深度1m 単位重量30N/㎡/cm
 太陽光パネル荷重考慮 120N/㎡
 屋根の構造 金属屋根(GL鋼板立平葺)

というところです。積雪荷重の考慮のほかに、太陽光パネルの荷重も考慮しておりますので、新築時の設置予定の有無によらず、将来的にも対応できる状況です。

なお、これらの構造安全性については「許容応力度設計」による構造計算にて、構造の安定性(構面力の検討)、各部材の強度、基礎強度、についても確認できております。これからの住宅設計のおいて「構造計算」を行わない理由は全くありません。地震に対する強度の評価は地域性や建築場所の状況で変わります。そういった特異条件を考慮しない設計は非常に危険であるということを申し上げておきます。

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