以前、ブログでも取り上げた耐震改修工事の現場ですが、ようやく完成いたしました。
昭和36年建築のいわゆる「町屋」の住宅です。この時代の住宅は間取り重視であることと、農家住宅の形態として1階は冠婚葬祭もできるレベルの広間(8畳間を4つ正方形に配置)と縁側、そして居住スペースとしての離れや控えの間のような配置が一般的で、その形態を敷地の狭い町内(まちうち)に持ち込んで間取りを構成させるという特徴があります。農家住宅では2階はいわゆる「納戸」として、農機具の収蔵庫であったり、養蚕の場であったり収穫物の保管庫だったわけですが、これが町内の住宅になってきますと、抜本的に2階に居室をつくることになり、そのため現在のような2階階高がそれなりに高い建物になってきた経緯もあります。
従って、内観や外観の設えも当然いわゆる「古民家」といわれるような状態になります。また、大きな開口を作ることが主体となるため、2階を支える柱などは、240~300mmもあるような大きな柱ですし、梁についても末口が300~360mmといった丸太が多用される建物になります。そのため、開口部は幅広く取られるわけで、イマドキの住宅のような「耐力壁」というものの存在は少ないのです。
そういった建物を耐震補強するという場合には、生活上、必要のない開口部などをつぶしていくということも想定に入れなければなりません。とにかく、壁になる部分が少ないのでw

このような形で、新たに基礎をつくり、町屋独特の店先の土間に壁を作るというのも提案としてでてきます。この壁は壁仕上げはせず、筋交いが化粧材のように見せている耐力壁となっています。見学会のときにもお見えになられた方が「なるほど!割り切り方の問題や!」との感想もいただきました。これが正解というわけではありませんが、お店ももうされておらず、土間空間が空いているだけの存在価値や利用価値がないスペースを古き良き時代のものとして残すか、それとも安全性を少しでもアップするか?を天秤にかけたときにご判断いただくのはお客様です。
さて、この種の建物はとかく壁がありません。またあったとしても、豪華なお座敷の床の間や巨大な仏壇が収納されている仏間なので、そんなところを改修するとなればかなり高コストになります。コストを重視すればできるだけ安価な仕上げ復旧で済むところで壁補強をすることになります。したがって、押入などは格好の耐震補強箇所になるわけですが、それでも足りない場合は少々厄介なところに手を付けねばなりません。
この画像は縁側の「突き当り」という部分です。意外とこの部分にはタンスが置かれている事例が多いです。また、縁側といいながらモノで溢れかえっている事例も多いですw


普段使いの用途が単なる物置スペースであれば、壊して復旧もそれほど気を遣うような状態でなくてもいける!ってわけですw
年代的には土壁ですのでこれを補強するとなれば、土壁を落とさず構造用合板での補強などが考えられますが、とにかく壁が少ないわけですので、一か所の補強でかなりの耐力のある壁にする必要が出てきます。ですが計算上は10kN/mまでが耐震評価のルールですし、基礎状況で低減率もあります。壁が少なければ結果的に改修する箇所では10kN/mまでアップした壁をつくることになりますが、土壁+構造用合板張りでは、せいぜい7kN/m程度までが限界です。
そこで計画したのは、
「この壁をぶち抜いて土壁落として筋交い入れて、構造用合板張ってくれ!」
という設計ですw 当然、町屋の古民家ですから外観はこんな感じですwww

これを「よろい下見板張り」といいます。
概ね3尺ピッチで立てられた柱に「真壁」として下見板張りを外装として張っていくわけです。すべてをよろい下見板張りにする場合と、上のほうだけ漆喰を塗ってアクセントにする場合がありますが、流石に町屋の家ですw おしゃれなわけですwww
この画像の右から2番目の壁が室内から見た写真の壁です。で、ここを抜け!というわけです。そして、もちろん復旧は、
「元あった通りにせよ」
というわけです。さて、よろい下見板張りは、昔の大工さんたちが考えたメンテナンスしやすい外装だったりします。縦の桟を外すと板自体をバラバラに外していけるのです。ですが、桟を外すときに破損させてしまうこともあるので、その時は桟を作り直すというわけですが、どうしても新しくすると色合いが合わないので単なる復旧ではダメなわけですw 元の材料をそのまま使え!という指示なわけです。


大工さん、しっかり抜いてくれましたw 筋交いも入って補強もイイ感じですw 問題は外の復旧ですが、ご覧の通りです。


いかがでしょうか?w 耐震改修で補強した壁になりましたので、少々壁の厚みが出てしまい、縦桟の出入りが3mmほど大きくなってしまったので、柱際のところで「ん?」って感じではありますが、それほど目立ちませんw 漆喰の部分は「GL板金」で仕上げてコストを落としました。まぁ壁の位置は隣地境界線際の壁ですので、あまり人目につきませんのでコストを掛けて漆喰まで塗らなくてもよいだろうとの判断です。

サッシも入替ましたw もはや外と同じレベルの縁側がしっかり「部屋」として生き返りました。漆喰だった部分は、できるだけ平滑なクロスを選定して仕上げました。
この手の建物の耐震補強工事は、「大工さんのセンス」の部分が非常に重要です。元の意匠性をできるだけ損なわず、かつ、コストを掛けすぎないという部分で想定した設計に対して施工面でそれを実現するわけですが、やっぱし技があってできる部分が多いのです。


