耐震等級3は本当に安心なのか?

耐震等級とは?

震災が発生するたびに話題になるのが、「耐震等級」というものです。耐震等級には、1から3のレベルがあります。一般的には、
耐震等級1 : 建築基準法仕様規定レベル
耐震等級2 : 耐震等級1の1.25倍の耐力
耐震等級3 : 耐震等級2の1.5倍の耐力
という形になってます。これだけみますと、耐震等級3は建築基準法に準拠しただけの建物より50%もの耐力があり、すごい!ということになりますが、そもそも何に対しての耐力かっていうところを理解している人は少ないです。

耐震性能とは?のおさらい

まず、以前のブログで取り上げました「耐震性能とは?」をご覧くださいませ。

繰り返しますが、耐震性能とは地震による加速度で建物に加わる水平力にどの程度耐えうることができるのか?ということを示します。従って、その耐震性能は「建物重量」に影響されるということを説明しています(F=maというニュートンの公式が基本です)。つまり、耐震性能はどの家でも一律なエネルギーに対応するものではなく、その建物の重量によって求められる性能が変わってくるというものです。

耐震等級と建物重量

耐震等級についてものすごく話を単純にして説明しますと(ホントは細かな計算が必要なのですが、わかりにくくなるので)、たとえば建物重量が10tの建物があったとします。等級1では影響を受ける地震力が2tだったとします(あくまでも単純にしてます)。等級2では1.25倍の耐力ですから、2.5tの力を受けても耐えることが要求されます。等級3はでは3tの力を受けても耐えることが要求されるわけです。では、建物重量が30tになればどうなるか?は単純な掛け算にしかなりません。具体的に要求される耐力というのは「建物重量」に影響されるわけですが、では、この建物重量というのは何かというと、

・材料などの自重(固定荷重G)
・人や家具などの重さ(積載荷重P)
・風などの力(風圧力W)
・雪の重さ(積雪荷重S)
・地震の力(地震力K)

を評価します。これらの荷重を設計で考慮する荷重状態としてどの程度考慮するかというのが、建築基準法ではさだめられており、以下の表のような形になっています。

建築基準法における荷重状態

この表をよく見ますと、「長期」というところを注目すると、一般地域ではG+Pですが、多雪地域ではG+P+0.7Sとなっています。つまり、耐震性能を検討するにあたっては、雪が降らない地域、正確には多雪地域ではないところの建物重量と、多雪地域での建物重量では雪を考慮する分、建物重量が「重くなる」わけですので、結果として求められる地震に対する耐力も増大します。ちなみに、福井県においては、原則0.7Sの部分を1.0Sとして評価することと、一般的な積雪の単位重量が積雪量1cm ごとに1㎡あたり20N(約2kg)に対して30N(約3kg)という条例がございます。また、積雪荷重は各自治体での取り決めによる積雪深度によります。福井市内においては2m(ただし雪下ろし措置ができる住宅の場合1mまで低減可能)となっていますし、山間部にいけば3mという設定のところもございます。つまり1㎡あたり6000N以上(600kg)の荷重を想定することになります。

地震時に想定する荷重 

では地震時に想定する荷重はどうかというと、表の中の地震時というのをご覧いただければ、一般地域ではG+P+Kであり、多雪地域ではG+P+0.35S+Kと記載があります。このKの部分ですが、地震力であり、

Qi=Ci×ΣWi

という式で表されます。ここで、ΣWiとは、例えば2階建ての1階なら1,2階の重量、2階なら2階だけの重量WiにCi(その階の層せん断力係数)というものを掛けたものを地震力としますよという意味です。その階の層せん断力係数って難しそうですが、簡単に言えば、建物重量Wのどの程度を地震力としてみなしますか?というものですが、大震災が起きるたびに問題になる数値になります。これも、

Ci=Z×Rt×Ai×C0

で算出されます。記号の説明です。

Z : 地震地域係数
Rt : 振動特性係数
Ai : 地震層せん断分布係数
C0 : 標準せん断力係数

といわれているものです。これらは地域性でかわるものが多いです。特に地震地域係数は地震の発生する割合や危険度から定められている数値ですが、0.7から1.0の幅があります。ちなみに福井では1.0、関東、中京、関西では1.0、九州北部では0.8となっています(これについては別の機会にテーマにしたいと考えています)。耐震等級で問題にすべきなのは、C0という値です。このC0は、建築基準法では0.2とされています。その他の係数はおおよそ1.0のことが多いので、Ciとしては0.2ということになりますので、建築基準法においては建物重量の20%を地震力としてみなしていることになります。これを耐震等級1という扱いになるわけです。

では耐震等級2ではどうなるか?といいますと、25%アップですので、C0=0.25、耐震等級3では50%アップですので0.3ということになります。言い換えますと、

耐震等級1 : 建物重量の20%を地震力とする
耐震等級2 : 建物重量の25%を地震力とする
耐震等級3 : 建物重量の30%を地震力とする

ということになります。ですが、ここで実際に地震時に評価する荷重は先ほどもお示ししましたとおり、

一般地域 : G+P+K
多雪地域 : G+P+0.35S+K

です。地震力Kだけの評価ではないのです。

同じ耐震等級でも地域が変われば全く違う!


言い換えますと、一般地域での耐震等級3と多雪地域での耐震等級3では求められる地震力のレベルが全く違うということなのです。もっと具体的にいうと、東京で計画した住宅が耐震等級3だったとしても、その設計自体を福井に持ってきたところで耐震等級3には「満たない」ということです。耐震等級は特段専門的な知識がない方でもその性能を推し量るために考えられたものですが、本来は、どの程度の条件下での等級レベルなのか?ということを知らなければなりません。

ちなみに、福井においては1年中雪で閉ざされるわけではありませんし、想定した2mとか1mの積雪が常に冬に発生するか?ということはないのが現状です。ですが設計レベルでは最悪の状態を想定しますので、取り決められた積雪荷重を検討するわけです。笑い話にしかなりませんが、「福井で等級3を取得できたら、そのまま東京にもっていったら等級4か5だ」なんていうことがありうるような話しが出てくるくらいです。

これを先般の能登の震災に置き換えて考えれば、元旦の日にほとんど北陸周辺で積雪がなかったことが倒壊数をある程度抑える結果にもなったのでは?とも思います。あれが豪雪の正月で屋根に50cm、1mと積雪があった場合には、等級に関わらず相当な建物被害が発生したのではと推測します(とはいえ、倒壊してしまった建物がないわけではないので、本当に見ていて辛い気持ちになります)。

耐震等級の表現にご注意


耐震等級3を謳う建物について、憤りを感じるような営業もございます。耐震等級2でも3でも、等級に合致しているかどうかについては、第三者機関の「認証」あるいは「検証」が必要です。ところが、そういったことを受けずに、耐震等級2相当、耐震等級3相当などというあいまいな表現をキャッチフレーズにしているところがあります。また、耐震等級2、3が、等級1に比較し25%アップ、50%アップということで、単に耐力壁としての筋交いや面材で構成される箇所を25%アップ、50%アップしているに過ぎないのに耐震等級を謳っているところすらあります。

また本来は建物重量やそれに伴う地震力を算定し、その力に対して耐力があるか、またもっと重要なのは、その力が加わったとしても柱、梁、基礎などが損傷しないという設計が必要で、これらを評価するためには「構造計算」が欠かせません。ですが、複雑な計算のためノウハウがないとできません。そこで「簡易的」にする方法として定められた「スパン表」なるものを使って、耐力壁などの量を決定していくという手法もございます。ですが、この手法はあくまでも一般的な重量での評価を一般地でも多雪地域でも行うだけで、本来の構造計算の過程を経ているわけではありません。また、想定している積雪量や、柱間の距離などが超える場合にはつかえません。従って、スパン表を利用する耐震等級にはそれらが適用できるだけの「前提」が必要になるのと、あくまでも簡易的に評価しますので、より安全側に部材などを評価できるように過大設計となる部分もございます。従って、特に雪国で耐震等級を吟味するのであれば、「構造計算」による耐震等級評価が必要となります。

耐震等級が謳われている貴方の家には構造計算書がありますか?

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