住宅を建てるにせよ、事務所や工場、倉庫、店舗などを建てるにしても、まずは設計という部分が重要です。一般的には「建築士」に依頼することになりますが、お仕事をお願いするのですから「設計料」というもの費用が発生してきます。ところが「建築士」だからといって、設計料を報酬として受け取ることについては、実は法律的に規制を受けています。これをご存じでないお客様は結構おられます。
根拠条文は以下の通りです。
(登録の実施)
第二十三条の三 都道府県知事は、前条の規定による登録の申請があつた場合においては、次条の規定により登録を拒否する場合を除くほか、遅滞なく、前条各号に掲げる事項及び登録年月日、登録番号その他国土交通省令で定める事項を一級建築士事務所登録簿、二級建築士事務所登録簿又は木造建築士事務所登録簿(以下「登録簿」という。)に登録しなければならない。
(無登録業務の禁止)
第二十三条の十 建築士は、第二十三条の三第一項の規定による登録を受けないで、他人の求めに応じ報酬を得て、設計等を業として行つてはならない。
2 何人も、第二十三条の三第一項の規定による登録を受けないで、建築士を使用して、他人の求めに応じ報酬を得て、設計等を業として行つてはならない。
簡単にいいますと、「建築士事務所登録」を行って、都道府県知事により建築士事務所として認可を受けている設計事務所に「所属している」建築士が、設計を業務として行った場合にのみ、報酬として対価を受けることができるというものです。さらに、違反した場合の「罰則規定」も定められています。
第三十七条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(~ 省略 ~)
九 第二十三条の十第一項又は第二項の規定に違反したとき。
なお、同時に行政処分の対象にもなりますので、その建築士は免許剥奪の処分を受ける場合もあります。確かに大人数の設計士を雇い入れて、その上で「設計業務を会社として行う」ということではなく、設計士さんお一人で設計業務をなされるという形態をとられているところは非常に多いのですが、ちゃんと定めに従ってお一人でも事務所登録をして認可を受けてお仕事をされているが圧倒的大多数の中、無登録という不法な状態で設計業務をなさっているという設計士が存在していることも否定できません。
なぜ、設計事務所登録をしないか?といいますといくつかの理由が考えられます。
①事務所登録には費用がかかること(それでも15,000円程度ですが)
②5年後とに更新があること(更新料がかかります)
③毎年度ごとに「事業報告」が必要なこと
(会社組織であれば決算期後、個人であれば1~12月を事業月として)
④抜き打ち的に都道府県より事務所立入検査があること
(「装備品」、「保管図面」、「業務記録」などを精査される)
こうしたことに対して、どうしても甘受できない事情があるのでは?と思われます。あるいは、別に収入を得ており(例えば、一般会社に勤められ給与をもらっているなど)、ダブルワークとして設計士の資格を使って報酬を得ているということも考えられます。
設計士が受け取る報酬については、罰則規定をしっかり定められている上で、実は、国として「業務報酬基準」というものを定めています。
どの程度の設計作業であるか、また、その内容はどのように区分けできるか?という部分で、それぞれに単価レベルが設定されているものですが、こうした報酬基準を定めているのは、「設計士に対して経済面から安定的にサポートし、個々の技量をしっかりと研鑽させるため」であるのと、人間ですのでミスが絶対にないわけではありませんから、設計における万が一の事態に「保険制度」も含め、金銭的な補填のバックアップを確固たるものにすることで、安心して設計を依頼できる環境をつくることにあると思われます。もちろん、これらは、「一般的な設計業務」だけではなく、「耐震診断、耐震改修工事監理」などの分野にも同様に適用されます。
設計士とのやり取りで「費用」のお話しが出た場合には、その設計士さんが建築士としての資格をもっているか?だけではなく、「業」として行うための「設計事務所登録」がなされているところで設計業務に携わっているか?を確認する必要があります。