その2に続きます。
その2でご説明したとおり、「木造2階建て住宅」では、建築基準法に定めらた「仕様規定」に基づく設計がなされていることがわかれば、それで法適合しているということになります。そして、その「仕様規定」に基づく設計が目標としているのは「震度5強レベル」で「無損傷」であるというものです。それ以上「震度6」以上の場合には、損傷しても修復により使用可能というレベルであること、その損傷とは「倒壊しない」という話しでしかないということもお伝えしました。
この話をそのまま解釈すると、地震の震度レベルで考えた場合、震度5強以上、震度6などの「発生確率」はそれほど高くないだろうという考えによって、「まぁ、今の法律レベルで作れてるのであれば、それでいいかも」というお考えになる方もおられると思います。
ここで、ちょっと、衝撃的な質問をします。
「本当に建築基準法の仕様規定通りに作られているの?」
建築主である皆さんが確認や理解していますか? こんな質問をされると、そんなの設計の人がちゃんとやってるのが当たり前なんだし、確認申請とかいう制度もあるからだれかがそれを見てくれてるんじゃないの?っておっしゃるのではと思いますが、そう信じてますか?
実は、ここで法律的な大きな問題があるのです。それが「4号特例」というものです。
建物にはその重要度に応じて法的に1~4のランク分けがあります。細かい法律的な説明はここではやめておきますが、一般的な木造住宅の2階建ては、4号と区分けされ重要度としては最低のレベルになります。特例は様々な部分に及びますが、特に「構造安全性の評価」は、確認申請において特例によって「審査を省略」されることになります。つまり、木造住宅で、耐震性の肝になる、
・筋交いなどの耐力壁の規定(壁量計算)
・四分割法によるバランス検定
・柱の頭、脚の金物検定
・鉄筋コンクリート造の基礎構造の強度
~その他、構造規定のほとんど
については、第三者が確認申請を通して法的に合致しているかの確認が「省略」されるということになります。(ただし、審査機関や特定行政庁の主事等の意向で、審査対象にしている場合があります。福井県では県及び特定行政庁の福井市に確認申請を依頼する場合には審査されます。)
これを逆手にとりますと、構造部分の耐震性を設計で吟味せず、単なる間取りや外観の図面を書いただけで業手続きである「確認申請」をすり抜けることはできます。こんな悪徳な設計者はほとんどいないとは思いますが、そういった審査がないことで、構造安全性の評価を簡単にすませ、単に筋交いなどの壁量を基準に合わせた「数だけいれる」ことで終わらせたり、そこから連動する金物の設定を行うだけで、「構造安全性の評価」を完了していると判断している設計者は多いです。
どのレベルまで設計されているか?は設計図面を見れば一目瞭然です。皆さんがお持ちの設計図書に、
・壁量計算
・四分割法によるバランス計算
・金物計算
・基礎の断面詳細図
などの記載があれば、ちゃんと仕様規定を吟味していると判断ができます。この場合、第三者が法適合しているという確認を省略しているだけで、設計者としてちゃんと仕事をしているということです。
では、そもそも、なぜ「4号特例」などという制度がつくられたのでしょうか? それは、行政をはじめとする審査機関の作業を合理化するためでしかありません。はっきり言えば、木造2階建て住宅レベルでの設計は、いわゆる設計士といわれる有資格者がちゃんと設計していれば問題ないレベルの規模であって、第三者が目くじら立てて、重箱の隅をつつくような審査をせずともよいわけです。それくらい、構造安全性の評価について手間のかかる話しではないのです。
特例制度ができて以来、住宅レベルで構造自体を吟味したりするよりも、外観イメージが良かったり、室内動線が良いことのほうを重視したほうが、わかりやすく設計や営業アピールができますので、「家づくり=間取り外観づくり」といった感覚が強くなってきたことは否定できません。また、そういった設計事務所や工務店、ビルダーも構造安全性の評価という部分では経験値を積むこともなく、こうした意匠性の高い設計に終始したことで、構造安全性の評価自体をないがしろにしてきた経緯も否定できません。
この「4号特例」という制度を「設計の省略」として解釈している設計者や設計事務所、工務店、ビルダーが建築した木造住宅は、その建物の構造安全性に関しては少なくとも仕様規定の数量的な部分の基準をクリアしていたとしても、疑わしいと言わざるを得ません。