高さ方向のバリアフリーを実現するために

「バリアフリー」というと一般的には、段差解消や通路幅の確保、ドアや戸などの有効開口幅の確保、手摺設置などがテーマになりがちです。しかし、新築でもリフォームでも、面積の大きな家であればそれなりの計画や改修ができますが、面積の小さい家であればなかなか思うような「バリアフリー改修」ができなかったりします。

先日、狭小地での住宅新築を計画し完工しましたが、その際に考えたのが「高さ方向のバリアフリー」です。土地の大きさが狭ければ、建ぺい率の問題もあってなかなか大きな間取りが計画できません。したがって高さ方向に部屋数をとっていくことを考えることになりますが、このとき、高齢者など足腰に問題があるとすれば階段の上り下りについては大きな負担となります。

そこで、採用したのが「エレベーター」です。施設建設では当たり前に計画されるエレベーターですが、住宅で採用されるようになったのは今から30年以上前のことです。規制緩和もあり「ホームエレベーター」という小型で、構造が簡単なものが開発販売されるとたちまち広がったわけですが、どうしてもコスト高になることもあって、敬遠されることもしばしばあります。ですが、エレベーターを採用することで、狭小地においても、バリアフリーを意識し、かなり自由な間取り構成を実現することができます。

一般的なバリアフリー住宅を計画する場合、高齢者の生活動線は1階に集約することが多いです。玄関も段差解消し、外部からはスロープ状で全く段差を意識することなく室内まで入り込むことができるようにもしたりします。ですが、1階に高齢者が生活するための室をすべて配置できるほどの土地の面積があれば別ですが、なければ上階に伸ばすしかありません。それを実現するためには、上下階への移動を円滑にする方法を考える必要があり、その手段が「エレベーター」です。

以下の画像は実例です。建物の間口は3640mmしか取れない土地形状です。いわゆる「ウナギの寝床」のような土地に、住環境としてすべてを盛り込むことが必要でした。

ご高齢であることから、室内動線には段差はほぼゼロにする必要がありますが、それ以上に、土地の狭さに対してどのように必要な部屋を盛り込んでいくか?が「鍵」になります。そこで、上下階を自由に行き来できるようにすることで、平面的な土地利用を立体的に使えるように考え、そこにバリアフリーの発想で移動を円滑化するための「エレベーター」を計画しました。寝室から出るとすぐそこにはエレベーターが待っています。

このまま2階にいきますと、エレベーターを降りればリビングに到達します。このリビングを中心に2階に設置した浴室などにアクセスすることになります。

日常生活での暮らしぶりというのも重要で、結局、日中のほとんどをリビングで過ごされるということであれば、寝室は「寝るだけのための部屋」という扱いになり、日常的な動線はほぼ2階だけですべて満足できるということと、結果として、寝室だけを1階に配置するという考え方ができたことで、狭小地でもかなり盛り込んだ間取りをつくることが可能になった事例です。もちろん来客があったとしても、そのままエレベーターでリビングまで通してしまえば、来客者に寝室を覗き見られることもありません。

また、エレベーターは構造的な利点もございます。以下は、エレベーター設置作業中の画像です。

エレベーターを設置するためには、少なくともガイドレールが取り付く壁面は強固に作る必要があります。また、三方の壁の防火性能を満足する必要があります。その結果、このエレベーター昇降路の壁は「耐力壁」として計画することができますのと、それを建物の中央部に配置することで、この空間が構造的なコア部分になります。このコアを中心に水平力がかかった時に建物が回転しないような耐力壁の配置を心がければ、非常に安定的な構造計画になります。

さて、気になるのは「お値段」かと思います。エレベーターは建物の構造で採用する部材などがかわりますのと、そのエレベーターの「グレード」にもよっても変わります。今回の事例は「ホームエレベーター」で木造での計画になりますが、そのお値段はおおよそ250万円くらいでした。コスト的には高価なものではありますが、結果として無理のない間取りになること、なにより上下階の移動が楽になるので使わない手はないかと思います。

また、エレベーターは既存建物に対しても設置が可能です。様々な手法がありますが、一般的には、「押入」をつかってリフォームすることがよくあります。また、エレベーター昇降路だけを外部に増築するということも手法としてはあります。

もし、足腰や障がいの問題などで建物内の移動に悩んでいるのであれば是非お問い合わせください。

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