その3のおさらい
その3に続きます
その3では、仕様規定に準拠して設計されているのか?という実態についてお話しました。仕様規定でもちゃんと設計を行っていることが確実であれば、少なくとも建築基準法が想定しているレベルの耐震性(震度5強で無損傷、それ以上でも修復により使用可能)は問題ないと言えますが、「4号特例」というものを逆手にとるような設計しかしていない設計士が計画した建物は、耐震性自体の評価が浅い、あるいは皆無であるということでした。
構造計算の必要性
では、本来、「耐震性を評価する」ためにはどんな設計手法をとるべきなのでしょうか?もう一度、以下の図をご覧ください。
仕様規定というのはあくまでも規定による数値レベルをクリアすれば一定の耐震性を担保するというレベルです。本来、どのレベルの地震までは対応できるようにするのか?というのを「性能」というレベルで評価するためには、計画している住宅の重量、部屋の中に置く家具などの重さ、どのように柱や梁をかけるのか、基礎の構造はどうするのか?という構造計画、そして建物の形状などの細かな要素を元にした「構造計算」というものをしない限り、その評価にはなりません(以下のブログテーマをご覧ください)。
現行の建築基準法では、確認申請でこの構造計算を確認資料の中に入れるのは木造住宅の場合、事実上、3階建て以上だけです(面積規定は別)。ですが、それは確認申請という行政手続き上の審査資料でしかなく、「構造計算をしなくていい」とか「構造計算をする必要がない」というわけではありません。設計士が、構造安全性の評価を行うにあたって、不安な要素があるとか、大きな荷重(例えば積雪など)を考えなければならないのであれば、構造計算によってその可否を判断するのは、実に普通のレベルの設計手法でしかありません。むしろそれを「構造計算をしなくていい」とか「構造計算をする必要がない」という理由だけで行わないとすれば、それを言う設計士の建築に関する知識や経験が非常に低いか、そもそも、構造安全性の評価に関して知識がないということにしかなりません。
もし、あなたが住宅の耐震性が心配であるなら、その設計に対して「構造計算」を行ってくれるように依頼してみてください。その際、以下のような答えを返してきた設計士に設計を任せるべきではありません。このような答えを返す設計士は、まず、100%構造安全性の評価に自信がないか、知識がありません。
言い訳①「確認申請で必要ないので構造計算する必要がない」
確認申請で仕様規定で設計されていることを設計条件として皆さんに示しており、かつ、その耐震レベルの説明があればよいですが、構造計算をする必要性というものをこれを理由にする設計士は、もはや100%構造計算をする能力がありません。そこから逆に考えますと、そもそも、仕様規定での耐震レベルのことや、あなたが希望する間取りに対しての構造計画はできていませんので、設計としては単に、間取りや外観のデザインに終始しているにすぎません。
言い訳②「構造計算を行うと建築費が高くなる」
建築費を論じるのであれば、間取りやデザインの意匠的な予算と、柱や梁、基礎などの構造計画を併せて、かつ、それに設備や外溝、時には既存の建物の解体も考えるべきですが、言い訳①にも連動しますが、構造計画がちゃんとできていないのに、建築費が割り出せるというのは実に不思議な言い訳です。実はこれは逆に「建築費が落とせる」可能性が高いです。それは、仕様規定では、できるだけ安全側に評価できるように、一部、過大評価をする傾向があります。ですので、計算をきっちりやることによって、経済的な設計になるようにできるわけです。この言い訳をする設計士(特に、ビルダーなど)は、建築費をとかく「坪単価」で話す傾向が強いというのもあります(別の機会にブログテーマにします)。
言い訳③「構造計算を行うと自由なデザイン、間取りができない」
実際、この言い訳が一番多いかもしれません。でも、なんの建築の知識がない方も、この言い訳のどこに合理的な部分があるか疑問に思うと思います。そもそも、構造計算は構造安全性の評価です。つまり、自由なデザインや間取りを計画した、その計画に対しての構造安全性の評価です。それがNGとなれば、安全性がないわけですので、どこかを是正してそれほど自由なデザインや間取りに制限が加わらないように工夫する、それが「設計」なのです。おそらく、こんなことを理由にする設計士が、設計士として名乗れるのか?といえば、機械設備や電気設備、皆さんが生活でつかっている家電、車、そういうものを設計してる方にそんなことを言う人は一人もいないわけですので、如何に愚かな言い訳かはご理解いただけると思います。
まとめ
皆さんの住宅を設計するという仕事は、皆さんの希望を叶えることですが、そこには当たり前に「安全性」というものが存在しているのですが、それがなぜか蔑ろにされることが建築、特に、住宅レベルでは横行していています。これらのことは、国土交通省でも問題にしており、2025年、「4号特例の廃止縮小」を軸とした抜本的な法改正に踏み切ることがすでに決定しています。2024年の1月現在、そのための法改正セミナーを国の予算をつかって、国土交通省が主催し説明会や業務説明会などを全国各地で開催しています。そして、識者の間では、おそらく対応できない建築士や建築士事務所が多数出てくるということもまことしやかに言われている状態です。
弊社は、以前より構造安全性の評価を「構造計算」を行うことで対応することを、DreamProjectの一環としてお約束しております。