住宅改修のあれこれ

今持ってる住宅を完全に壊して新築したり、分譲地などで土地を購入して新築したりという需要がある一方で、既存の住宅の一部を残してあとは壊して、壊したところに新築してほしいというご要望もあります。今日は、そういった需要についてお話したいと思います。まずは、画像をご覧くださいませ。

左手の薄いグレーの部分の建物が既存の住宅で、右手の黒っぽい部分のところまで建物が建っています。画像、赤のラインより右部分を切断解体して、解体の後に黒っぽい部分のところに「新築」するというものです。見た目は新築ですが、これは「増築」という行為になります。

このような事例は、

・親世帯の住宅に子世帯が住む、同居する。
・親世帯と子世帯の生活スタイルが違う。
・工事中の親世帯の引越しについては避けたい。
・既存の建物に思い入れがある。

というような思いがあるとご要望として出てくる事例です。特に、3つ目の「親世帯の引越しをしない」という部分は重要で、生活環境の変化だけではなく、引越しによる荷造りなどの負担も相当あるわけで、少しでも負担を減らすという意味合いでは重要な検討項目となります。また全て壊して、新たに2世帯住宅を構えるとなるとコスト面での負担も大きくなります。

そこで、こういった建築手法が可能かどうか?ですが、木造在来の建物は「通柱」という部分で構造体をブロック化できますので、通柱を基準に残す部分と解体する部分を分けることで対応は可能です。また、画像のように赤の線と青の線の間に間隔があるように、実際の構造は「分離」されています。このようなやり方を「エキスパンションジョイント(以下、EXP.J)」といいます。赤と青のラインの間隔の部分の壁などには、梁や柱はなく、単に、外壁や内装仕上だけでつながっている状態になります。今回の計画では約30cm程度、建物が離れている計画としています。

地震などで建物がゆすられた場合、大きな地震の場合には、EXP.Jの部分の部分、すなわち、赤と青のラインで建物がひきちぎれるような仕組みになり、それぞれの建物が相手の建物に対して構造への影響をできるだけ与えない手法となります。この場合、以下の画像のように、

特にベタ基礎などの耐圧版、あるいは布基礎のフーチングなどのスラブのようになる部分については、絶対に既存の建物につなげるような施工をしてはいけません。防水シートやスタイロフォームなどを挟み込んで、確実に既存の建物の基礎と「縁を切る」ようにしなければなりません。そうしないと、新築する側の力が既存の建物に伝達してしまうからです。

ただし、法的には、いくつかの条件が出てきます。ここでは詳しくは説明しませんが、確認申請上は、構造が分離されているとはいえ、残される部分の構造が、過去の建築時点での基準法に合致しているということの立証と、解体後に残った部分に対しての構造耐力に問題がないことを示さねばならないことと、構造以外の部分の規定については、全体で法規制に対してクリアしなければなりません。特に住宅でも200㎡を超すケースが多くなりますので「排煙無窓の検討」などが要求されます。

これらの規制に対して、ある程度の緩和措置を受けるためにキーワードになるのは「既存建物(基準時)の床面積の1/2」を超える増築であるか?という部分です。このため、当初の建物が建築されてからの増築行為などの履歴が必要になってきます。また、多くの古い住宅の法的な状況は以下の2つの状況がほとんどです。

・確認申請がなされていない建物。
・確認申請はなされているが、完了検査がなされていない。

こうなりますと、元々の建物が最低でも「建築当時の建築基準法に準拠している」という証明が必要になります。例えば、以下の画像は、「鉄筋コンクリート造の基礎に土台が緊結されている」という項目に対する検査です。

この場合、建築士による現況調査がかなり細部にわたって必要になるため、それをメンドクサイと思う業者は、画像のような既存建物を部分的に解体して、解体した部分に新しく建築し全体を一体として運用するようなことをなんだかんだといって、全部壊して新築する方向にもっていくケースが多いかもしれません。

これらの調査は、一般住宅の場合と、非住宅の場合では評価されるレベルが違うことも事実ですが、国交省からも「既存建築ストックの長寿命化に向けた規定の合理化」などを含め、既存建物に対する増改築等の規制緩和策が打ち出されていることもあって、審査レベルでの判断も緩和されてきているのも現状です。

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