住宅の耐震性などについては、柱や筋交いなどの構造的な部分に対するご心配をされる方は多いのですが、実は、意外と、設備に関する耐震性については気になさらない方が多いです。工場や店舗などの場合には、設置する設備機器に対して、地震による揺れに対する備えはもちろん、その設備機器の重量が屋根や壁などにどのような影響を与えるのか?という部分をしっかり検討、計算し、設計に取り入れるのですが、残念ながら設計者自身が設備機器に対する認識が希薄であったり、そもそも重量というものを構造的な計画の中で加味する設計などを行っていない事例が多いです。実は、これも、以前からお話ししている「4号特例」に隠された問題であると言えます。
例えば、以下の画像は、エアコンの室外機が外壁に吊られた状態のものです。
設計において、外壁を構成している部材の重量などがちゃんと考慮されていたとしても、この部位にエアコンの室外機が吊るされる場合には、当然、それを留めている箇所が柱の部分であれば、その柱に室外機の重量が作用しているわけですので、何らかの物理的な影響が発生します。
この場合、問題になるのは、室外機の重量がどの程度のものか?になりますが、例えば6畳用くらいの小さなエアコンで、機能的にもベーシックなものであればその重量は20kg未満と軽いものになります。それが一カ所くらいについているのであれば、特段目くじらを立てるほどの問題ではないのですが、これが大きな部屋をカバーするようなエアコン、例えば、20畳用を越すようなものですと室外機の重量は40kg以上にもなっていきます。
また、各部屋に一基ずつエアコンを設置し、敷地や隣地との関係などの兼ね合いで、地表面に室外機を設置できない場合などで複数台の室外機を壁に掛けるとなりますと、台数分の重量が偏った荷重(偏荷重)として作用しますので、影響が無視できなくなります。
雪国の家づくりの場合、屋根に積雪荷重などをしっかりと考慮している場合には、こうした想定外の重量がくわわったとしても、危険性は低いとは思いますが、太平洋側など全く短期的な荷重を考慮する必要がないような地域ではこうした「偏荷重」が地震時に思わぬ影響を与えかねません。近年、屋根に設置する太陽光パネルの重量の問題の指摘もありますが、この点についても同様なことが言えます。
また、設備の耐震性は、地震による損傷があった場合の取替を含めたメンテナンス作業を容易にできるような計画も必要です。機器の搬入路、搬出路や作業エリアなども重要な設計項目の一つです。特に土中に埋められた配管などが地震によって損傷をうけますと、公共の上下水道に問題がなかったり、早期復旧ができても、敷内での復旧に時間がかかることにより、結果として住居として使えないケースもでてきます。
耐震性を考える上では、設置する設備も重要であるということをご理解いただければと思います。