イマドキの新築住宅は安全なのか?その1

阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、そして今回の能登半島地震と大規模な地震が発生し、震災として生活を破壊されていく度に話題にされるのが、「建物の地震に対する安全性」です。特に、住宅の場合、日常生活を営む場所であることから、その影響はたいへん大きいです。その中で、古い住宅を解体し、新築しなおすということを選択されることも多いかと思いますが、その理由の一つとして、

「古い住宅を耐震改修するくらいなら、新しい住宅を建築したほうが安全性が格段に違う」

というものがあります。こんなセリフ、皆さん方でもリフォームを考えたりするときに、例えば、住宅メーカーさんとの打合せや相談の時に言われたりしませんか? 確かに、新しい住宅を新築することは、法で定められた今の耐震性能を踏襲することになりますので、古い家と比較した場合、耐震性能がアップするということはないわけではありません。では、法律的にどのような状況なのか?を説明します。次の図は、近年の建築基準法の改正を示したものです。

株式会社M’s構造設計 代表取締役 佐藤実先生作成。構造塾資料。

建築基準法は、その時々に発生した大規模な地震や火災など、様々な災害経験を元に都度改正されてきている法律です。昨今、メディアで多く取り上げられている「旧耐震基準」とか「新耐震基準」というのは、1978年の宮城県沖地震を踏まえ、1981年に改正された耐震基準をそれ以前のものを旧耐震、それ以降のものを新耐震といっています。そして、1995年に「阪神淡路大震災」が発生したことを踏まえ、2000年にも建築基準法が改正されています。言い換えれば、新耐震基準を1981年に制定しても「問題があった」わけです。これらの改正は、建築的には抜本的かつ重大な改正として位置付けられています。ですが、24年間、耐震基準を見直すことはなかったわけです。

では、2000年以降、大きな震災はなかったのでしょうか? そんなことはありません。2011年には東日本大震災があり、2016年には熊本地震がありました。ご存じのように凄まじい被害がでました。ですが、その結果、大きな改正があったか?というと「ない」のです。なぜでしょうか? それは、揺れの大きさ、地震派の加速度にあります。以前のブログテーマでも触れましたが、新耐震基準で想定された地震波を超してはいないためです。

つまり、法律が定めている被害想定として、震度5強で倒壊しない、震度6強以上でも損傷はしても修繕により使用可能というものベースに様々な規定を定めていますが、被害状況を調査するとその想定を超した被災建物が、新耐震基準をクリアして建てられたものには見受けられないという結果からくるものなわけです。

しかも「倒壊しない」は、例えば外壁などが破損しないとか、窓ガラスが割れることまでを想定した言葉ではありません。あくまでも、柱や梁、床、屋根などが破損し倒れてしまったりして使えなくなってしまうことでしかありません。ですが、震災の被害状況をメディアで見ると、傾いた建物などが映しだされていますが、それらが倒壊を免れたとはいえ、再使用できるレベルなのか?といえばそんなことはないでしょう。

「イマドキの新築住宅は、改正された建築基準法に合致しているので問題はない」は、2024年の今現在となっては、少々どころか大いに疑わしいと言わざるを得ません。それには別の理由も存在しています。これは、また別のブログテーマで説明します。

タイトルとURLをコピーしました