木材と炭素貯蔵量

カーボンニュートラルを建築的に語る場合に引き合いに出されるキーワードとしては、エネルギー消費量を削減する「省エネ性能」なのですが、実は、「木造建築」というものも重要なキーワードになってきます。なぜ木造建築がカーボンニュートラルを考える上で重要かといいますと、材料となる「木」の成長過程にその理由があるからです。

通常、植物でも草花は、芽が出てから成長し、花を咲かせます。植物ですので日中は光合成を行いCO2を吸収し成長していきます。そして、実として種を成したあとは枯れますが、その枯れた植物は土中の微生物などにより分解されます。このとき、成長される課程で吸収されてきたCO2は、再び自然界に戻されることになります。ところが、木は成長過程も非常に長時間であり、数十年、数百年以上の樹齢を持ち合わせます。その間、枯れることもなく、成長し続けますが、その際、光合成によりCO2を吸収し続けることになります。つまり長時間、長期間にわたって地球上にあるCO2を吸収し続けるということになります。「木」に吸収されたCO2は、成長の課程で炭素(C)として蓄えられていきます。

また、「木」は、伐採され成長を止められたとしても、「木材」として固体を維持し続けます。つまり、木を伐採し、ある加工を加えて「木材」としても、それを燃やさない限り、固体として固定化されたCO2は、木として炭素(C)として存在し続け、地球上に戻されることはないのです。これを「木材の炭素固定」といいます。

このような「炭素固定」の性質がある「木材」を建築に利用する、すなわち「木造建築」を行うと使用する木材量に比例して、炭素固定量も増えることになります。言い換えると、木造建築を執り行うことで、建築行為を行った人(法人)が炭素を貯蔵していることになります。ちなみに、一般的に言われているのは木材の重さ(重量)の約50%の炭素量を貯蔵していることになると言われています。

もちろん、省エネ性能をアップさせ、かつ、自然エネルギーを利用するような建築物を運用したり、また工場などの生産過程で生じる炭酸ガス発生量を削減していくことも重要で、そういったことを総合的に行うことで、「カーボンニュートラル推進」に寄与するということが言えるわけです。

さらに、最近では、この削減した炭素量をビジネスとして「取引材料」にすることも考えられ始めました。「カーボンビジネス」といわれるものです。これは、主に企業間で温室効果ガスの「排出削減量を売買できる仕組み」のことで、「炭素クレジット」とも呼ばれています。企業は環境活動によって生まれた温室効果ガスの削減量や吸収量を数値化し、「クレジット」として認証された「排出権」を他の企業と取引することができるのです。これにより、一方の企業でどうしても削減できない温室効果ガスの排出量を、その企業がカーボンクレジットを購入することで埋め合わせできるようになり、カーボンクレジットを売る側に「資金」が渡ります。売る側は対価をもってさらなる技術革新などを行えるというものです。このように排出量を相殺していくことを「カーボン・オフセット」と呼びます。

先日のブログでご紹介しましたが、弊社は「令和5年度福井県カーボンニュートラル推進企業」として表彰を受けました。

これからも、「カーボンニュートラル」、「低炭素社会実現」に向け、「建築物の設計施工」分野において創意工夫をすすめていきたいと考えております。

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