2025年建築基準法大改正(その2)

その1に続きます。

前回は、大改正により「確認申請」の審査が抜本的に変化し、これまで審査省略されていた部分の審査省略されなくなったことにより、特に、「木造2階建て住宅」に代表される小規模な建築物での「確認申請」時点の混乱が予想されることをご紹介しました。また、その裏に隠される「業界」として「悪習」についても触れました。さて今回は、審査省略がされなくなるという部分をもう少し詳しく述べたいと思います。

現在(R5.02時点)、ほとんどの木造住宅は画像左側で定められている「4号建築物」となります。都市圏での木造3階建て等は当てはまりませんが、おそらく大半の住宅はこの「4号建築物」です。そこで、どのような項目が「審査省略」だったのか、そして、今回の大改正でどの部分が審査されるようになるのか?を一覧表にしてみました。すごく長いです(笑)。左側が法律条文で、右側がその条文に対する審査事項ですが、赤字になっている箇所が、「これまで審査省略されていた部分」です。ただし、審査機関(特に自治体での審査)によっては、審査省略しなかった箇所もあります。

根拠条文審査事項
構造耐力上主要な部分で特に腐⾷、腐朽又は摩損のおそれのあるものに用いる材料の腐⾷、腐朽若しくは摩損のおそれの程度又はさび止め、防腐若しくは摩損防止のための措置(令第37条)[使用構造材料一覧表から転記]構造耐力上主要な部分で特に腐⾷、腐朽又は摩損のおそれのあるものに用いる材料の腐⾷、腐朽若しくは摩損のおそれの程度又はさび止め、防腐若しくは摩損防止のための措置
(令第38条)[基礎・地盤説明書から転記]地盤調査結果の検証による支持地盤の種別及び位置
基礎の種類
基礎の底部又は基礎ぐいの先端の位置
基礎の底部に作用する荷重の数値及びその算出方法
木ぐい及び常水面の位置
(令第39条)[構造詳細図から転記]屋根ふき材、内装材、外装材、帳壁、その他これらに類する建築物の部分及び広告塔、装飾塔その他建築物の屋外に取り付けるものの取付け部分の構造方法
構造耐力上主要な部分に使用する木材の品質木材の品質(令第41条)[使用構造材料一覧表から転記]構造耐力上主要な部分に使用する木材の品質
土台及び基礎(令第42条)[構造詳細図から転記]土台の設置、固定方法
柱の小径、防腐措置等(令第43条、第49条)[構造詳細図から転記]柱の有効細長比、柱断面の欠き取り、2階建ての隅柱、柱の小径
外壁のうち、軸組が腐りやすい構造である部分の下地
構造耐力上主要な部分である部材の地面から1m以内の部分の防腐又は防蟻措置
木造建築物の部材(令第44条から第47条)[基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、2面以上の軸組図から転記]構造耐力上主要な部分である部材(接合部を含む。)の寸法、構造方法及び材料の種別並びに開口部の形状及び寸法
建築物の基礎、主要構造部及び安全上、防火上又は衛生上重要である建築物の部分(令第144条の3に規定する部分)に使用する指定建築材料の種別建築物の基礎、主要構造部及び安全上、防火上又は衛生上重要である建築物の部分(令第144条の3に規定する部分)に使用する指定建築材料の種別
指定建築材料を使用する部分
使用する指定建築材料の品質が適合する日本産業規格又は日本農林規格及び当該規格に適合することを証する事項
日本産業規格又は日本農林規格に適合することを証明する事項
使用する指定建築材料が国土交通大臣の認定を受けたものである場合は認定番号
補強コンクリートブロック造の塀(法第20条、令第3章第4節の2)[構造詳細図から転記]塀の寸法、構造方法、基礎の根入れ深さ並びに材料の種別及び寸法
帳壁の材料の種別及び構造方法
鉄筋の配置、径、継手及び定着の方法
法第22条区域内の建築物の屋根(法第22条)[耐火構造等の構造詳細図から転記]屋根の断面の構造、材料の種別及び寸法
法第22条区域内の建築物の外壁(法第23条)[使用建築材料表から転記]主要構造部(外壁及び軒裏)の材料の種別
シックハウス等対策(法第28条の2)[使用建築材料表から転記]内装の仕上げに使用する建築材料の種別
換気設備の構造
天井裏等の種別
昇降機以外の建築設備(法第36条、令第129条の2の3第2号)[構造詳細図から転記]昇降機以外の建築設備の構造方法(給湯器等)
給排水設備配管(法第36条、令第129条の2の4)[配管設備の使用材料表から転記]配管設備に用いる材料の種別
配置図に関する基本事項(規則第1条の3第1項の表1)縮尺・方位
敷地境界線、敷地内における建築物の位置及び申請に係る建築物と他の建築物との別
擁壁の設置その他安全上適当な措置(法第19条第4項)
土地の高低(法第19条第1項)、敷地と敷地の接する道の境界部分との高低差及び申請に係る建築物の各部分の高さ
敷地の接する道路の位置、道路幅員及び道路の種類(法第42条)
下水管などの、下水溝又はためますその他これらに類する施設の位置及び排出経路又は処理経路(法第19条第3項)
塀(法第20条、令第3章第4節ほか)組積造の塀の位置(令第3章第4節)
補強コンクリートブロック造の塀の位置(令第3章第4節の2)
無筋コンクリート造の塀の位置、構造方法及び寸法(令第3章第7節)
水洗便所(法第31条1項)排水ますの位置及び公共下水道の位置
浄化槽(法第31条2項)浄化槽の位置及び当該浄化槽からの放流水の放流先又は放流方法
給排水配管設備(法第36条、令第129条の2の4)建築物の外部の給水タンク等の位置
配管設備の種別及び配置
給水タンク等からくみ取便所の便槽、浄化槽、排水管(給水タンク等の水抜管又はオーバーフロー管に接続する管を除く。)、ガソリンタンクその他衛生上有害な物の貯留槽又は処理に供する施設までの水平距離(給水タンク等の底が地盤面下にある場合に限る。)
くみ取便所、井戸(法第36条)くみ取便所の便槽及び井戸の位置
都市計画区域等に関する規定(法第3章)敷地の道路に接する部分及びその長さ
用途地域の境界線
指定された容積率の数値の異なる地域の境界線
防火地域の境界線
 第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離(法第54条)都市計画において定められた外壁の後退距離の限度の線
申請に係る建築物の外壁又はこれに代わる柱の面の位置
外壁の後退距離に対する制限の緩和(令第135条の22)に掲げる建築物又はその部分の用途、高さ及び床面積
申請に係る建築物又はその部分の外壁又はこれに代わる柱の中心線及びその長さ
建築物の各部分の高さ(法第56条)地盤面及び前面道路の路面の中心からの申請に係る建築物の各部分の高さ
地盤面の異なる区域の境界線
後退緩和(令第130条の12)に掲げる建築物の部分の用途、位置、高さ、構造及び床面積
道路斜線制限の緩和(法第56条第2項)に規定する後退距離
二以上の前面道路がある場合(令第132第1項若しくは第2項)又は前面道路の反対側に公園等がある場合(令第134条第2項)に規定する区域の境界線
前面道路の反対側又は隣地にある公園、広場、水面その他これらに類するものの位置
北側の前面道路の反対側又は北側の隣地にある水面、線路敷その他これらに類するものの位置
平面図全般に関する基本事項(規則第1条の3第1項の表1)縮尺・方位
間取、各室の用途及び床面積
居室の採光(法第28条第1項及び第4項)居室の採光(法第28条第1項)に規定する開口部の位置及び面積
 [配置図から転記]敷地の接する道路の位置及び幅員並びに住居系地域の採光補正係数(令第20条第2項第1号)に規定する公園、広場、川その他これらに類する空地又は水面の位置及び幅
住居系地域の採光補正係数(令第20条第2項第1号)に規定する水平距離
シックハウス、換気設備(法第28条の2)給気機又は給気口等の位置、排気機又は排気口等の位置
外壁の開口部に設ける建具(通気ができる空隙のあるものに限る。)の構造
階段(法第36条、令第23条から第26条)階段、踊り場、手すり等又は階段に代わる傾斜路の位置及び構造
住宅用防災機器の設置・維持(消防法第9条、第9条の2)住宅用防災機器の位置及び種類
市町村条例で定められた火災の予防のために必要な事項
居室の換気設備(法第28条第2項から第4項)居室に設ける換気のための窓その他の開口部の位置及び面積
給気機又は給気口の位置
排気機若しくは排気口、排気筒又は煙突の位置
かまど、こんろその他設備器具の位置、種別及び発熱量
火を使用する室に関する換気経路
 [換気設備の仕様書から転記]換気設備の有効換気量
便所の窓又は換気設備(法第36条、令第28条から第31条まで、第33条及び第34条(便所))便所に設ける採光及び換気のため直接外気に接する窓の位置又は当該窓に代わる設備の位置及び構造
火気使用室以外に設ける換気設備(法第36条、令第129条の2の5)給気口又は給気機の位置
排気口若しくは排気機又は排気筒の位置
立面図全般に関する基本事項(規則第1条の3第1項の表1)縮尺
開口部の位置
延焼のおそれのある部分の外壁及び軒裏の構造
基礎、屋根ふき材等(法第20条、令第3章第2節)基礎の配置、構造方法及び寸法並びに材料の種別及び寸法
屋根ふき材、内装材、外装材、帳壁その他これらに類する建築物の部分及び広告塔、装飾塔その他建築物の屋外に取り付けるものの種別、位置及び寸法
木造建築物(法第20条、令第3章第3節)構造耐力上主要な部分である部材の位置及び寸法並びに開口部の位置、形状及び寸法
採光補正係数(法第28条第1項、第4項)住居系地域の採光補正係数(令第20条第2項第1号)に規定する垂直距離
都市計画区域等に関する規定(法第3章)敷地境界線
敷地の接する道路の位置、幅員及び種類
壁面線
門又は塀の位置及び高さ
用途地域の境界線
土地の高低
 建築物の各部分の高さ(法第56条)[断面図から転記]前面道路の路面の中心の高さ
地盤面及び前面道路の路面の中心からの建築物の各部分の高さ
道路面と敷地の地盤面に高低差がある場合(令第135条の2第2項)、隣地との関係についての建築物の各部分の高さの制限の緩和(令第135条の3第2項)又は北側の前面道路又は隣地との関係についての建築物の各部分の高さの制限の緩和(令第135条の4第2項)の規定により特定行政庁が規則において定める前面道路の位置
法第56条第1項から第6項までの規定による建築物の各部分の高さの限度
前面道路の中心線
擁壁の位置
地盤面の異なる区域の境界線
後退緩和(令第130条の12)に掲げる建築物の部分の用途、位置、高さ、構造及び床面積
道路斜線制限の緩和(法第56条第2項)に規定する後退距離
二以上の前面道路がある場合(令第132条第1項若しくは第2項)又は前面道路の反対側に公園、広場、水面その他これらに類するものがある場合(令第134条第2項)に規定する区域の境界線
前面道路の反対側又は隣地にある公園、広場、水面その他これらに類するものの位置
北側の前面道路の反対側又は北側の隣地にある水面、線路敷その他これらに類するものの位置
居室の換気設備(法第28条第2項から第4項)[断面図から転記]給気機又は給気口の位置
排気機若しくは排気口、排気筒又は煙突の位置
断面図全般に関する基本事項(規則第1条の3第1項の表1)縮尺
地盤面
各階の床及び天井(天井のない場合は、屋根)の高さ、軒及びひさしの出並びに建築物の各部分の高さ
基礎、屋根ふき材等(法第20条、令第3章第2節)屋根ふき材、内装材、外装材、帳壁その他これらに類する建築物の部分及び広告塔、装飾塔その他建築物の屋外に取り付けるものの種別、位置及び寸法
広告塔、装飾塔その他建築物の屋外に取り付けるものの種別、位置及び寸法
木造建築物(法第20条、令第3章第3節)構造耐力上主要な部分である部材の位置及び寸法並びに開口部の位置、形状及び寸法
床の防湿方法、階段の構造など(法第36条、令第2章第2節、第3節)最下階の居室の床が木造である場合における床の高さ及び防湿方法
換気孔の位置
ねずみの侵入を防ぐための設備の設置状況
階段、踊り場、手すり等又は階段に代わる傾斜路の構造
平均地盤面の算定(規則第1条の3第1項の表1、令第2条第2項)建築物が周囲の地面と接する各位置の高さ
平均地盤面を算定するための算式
詳細図全般に関する基本事項(規則第1条の3第1項の表1)[構造詳細図から転記]縮尺並びに構造耐力上主要な部分の材料の種別及び寸法
基礎の構造(法第20条、令第3章第2節)[令第38条第3項若しくは第4項または令第39条第2項若しくは第3項の規定に適合することの確認に必要な図書から転記]令第38条第3項に規定する構造方法への適合性審査に必要な事項建築物の基礎の構造は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法(平12建告第1347号建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件)を用いるものとしなければならない。
木造建築物(法第20条、令第3章第3節)屋根ふき材の種別
構造耐力上主要な部分である軸組等の構造方法
補強コンクリートブロック造の塀(令第3章第4節の2)塀の寸法、構造方法、基礎の丈及び根入れ深さ並びに材料の種別及び寸法
帳壁の材料の種別及び構造方法
鉄筋の配置、径、継手及び定着の方法
法第22条区域内の建築物の屋根(法第22条)[耐火構造等の構造詳細図から転記]屋根の断面の構造、材料の種別及び寸法
法第22条区域内の建築物の外壁(法第23条)[耐火構造等の構造詳細図から転記]延焼のおそれのある部分の外壁の断面の構造、材料の種別及び寸法
壁量基準(法第20条、令第3章第3節、令第46条第4項)明示すべき事項:令第46条第4項に規定する基準への適合性審査に必要な事項各階床面積
床面積に乗ずる値
地震力に対する必要壁量(各階)
見付面積(各階・各方向)
見付面積に乗ずる値
風圧力に対する必要壁量(各階・各方向)
存在壁量(各階・各方向)
耐力壁・準耐力壁等の種類、仕様一覧
耐力壁・準耐力壁等の配置、長さ、柱位置、開口部の位置
耐力壁図と集計表の整合
壁量判定
準耐力壁等の必要壁量に対する割合
平面図全般に関する基本事項(規則第1条の3第1項の表1)[平面図から転記]壁及び筋かいの位置及び種類
通し柱及び開口部の位置
木造建築物における部材の位置等(令第3章第3節)[平面図から転記]構造耐力上主要な部分である部材の位置及び寸法並びに開口部の位置、形状及び寸法
法第22条区域内の建築物の外壁(法第23条)[平面図から転記]耐力壁及び非耐力壁の位置
居室の採光(法第28条第1項及び第4項)居室の採光(法第28条第1項)に規定する開口部の位置及び面積
 [配置図から転記]居室の床面積
開口部の採光に有効な部分の面積及びその算出方法
必要有効換気量の算出(法第28条第2項から第4項)必要有効換気量及びその算出方法
換気回数の検討(シックハウス等対策)(法第28条の2、令第20条の7、8)有効換気量又は有効換気換算量及びその算出方法
換気回数及び必要有効換気量
改正基準法 2階建ての木造一戸建て住宅(軸組工法)等の確認申請・審査マニュアル 第2章2.確認申請図書の作成例より
発行 一般社団法人 日本建築防災協会、一般社団法人 建築情報センター

これを見ますと、おおよそ「構造的な部分」については、ほとんどが審査省略されていたことがわかります。例えば「基礎の種類」なんていうのも審査省略されていたわけで、皆さんが耐震性が大丈夫なんだろうか?と疑問に感じたとしても、それを少なくとも「法的に」審査はしていなかったわけです。

ですが、これらがなぜ審査省略されていたのか?という部分についてが重要で、小規模な建築物であることと、地震や火災などに対する安全性の評価についてはある程度簡略化された手法で評価したとしても、その影響がごくわずかであるということを元に、「設計する建築士」の責任において、評価を完結してもよいとされていたわけで、それは国全体で考えた場合、建築行為として行わる割合が非常に多い住宅などの審査を、できるだけ早く、合理的にすすめるための「制度」としての審査省略なわけです。

本来、設計とは、要望にのっとって、設計士が知恵を絞り、様々な状況を想定し、予算を考えた上で最も合理的に建築物を提供できる最適解を示すことが目的であるわけです。そして「確認申請」というのは、その中で重要な法律的な規制に対して「適法」であるか?を審査する一つのプロセスでしかありません。そのことを理解できていない一部の設計者が、「確認申請」=「設計」というような位置づけをしてきたことが、今更ながら問題として浮き彫りになってきたこと、そして何より、南海トラフに代表される大地震の発生リスクが高まる中、確実に耐震性を持つ建物を今後建築させていく、それを住宅レベルの小規模建築物に対しても確実に要求していくという姿勢の表れだと考えています。

弊社では、これまでも住宅であったも、このような審査省略がなされていても、設計図書としては確実に押えた設計をしております。

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