能登の地震で福井県の北部では震度5強を観測しておりますが、地震発生して以来、この家は大丈夫なんだろうか、とか、事務所や工場などが大丈夫なのか?とかを調査、診断してほしいというご依頼が相次いでおります。そのような中、あくまでも簡易的ですが、それほど専門的な知識がなくてもある程度、判断ができる方法をご紹介します(実際には、同様な調査を私たちも行います)。それは、「柱や壁の傾き」を調べるというものです。
これは下げ振りといわれるものです。ホームセンターなどでも売ってます。100均とかですと、紐におもりが付いているだけのものもあるようです。これを柱のある部分の壁に取り付けます。
このとき、できるだけ柱がある部分に取り付けることが重要です。和室などで柱が見えているところなどは(これを真壁づくりといいます)、その柱とりつけることになります。洋室など柱がわからないところは、壁に取り付いているコンセントやスイッチの横などが柱のことが多いですし、画像のような場合、ドアなどの建具とスイッチやコンセントの間は、完璧に柱だと考えても大丈夫です。
そして、画像のように、下げ振りの「糸」のところで、高いところの部分と、低いところの部分で、壁からの離れを測ってください。例えば床から20cmのところと、180cmのところを測るなどを決めておくと楽かもしれません。低いところと高いところはできるだけ高低差があったほうがいいです。その測った結果、高いところも低いところも、だいたい同じくらい離れであったら(差が1mm~2mm程度)であれば問題がないと判断してもよいですが、その差がそれ以上であれば、以下の式で計算してみてください。
離れの差 ÷ {(高いところの高さ)-(低いところの高さ)}
例えば、高いところの高さが180cmで、低いところの高さが20cm、離れの差が5mmの場合、
5÷(1800-200)= 0.003
という計算になります。専門家が調査するときに、この割り算の値で建物の損傷レベルを判断するのですが、この値が1/300以上ありますと、なんらかの問題がある可能性が高いと判断します。1/300ですので、0.0033ということになります。この分数が、1/300以上1/120(0.008)で軽微な被害、1/120以上1/60(0.016)で小破、1/60以上1/45(0.022)で中派、1/45以上1/20(0.050)で大破、それ以上で倒壊という判断をします。正確な測定をするには、高さの差をより大きくとることが必要ですが、簡易的に判断するのであれば、ドアなどの高さでもかまわないと思います。この計測を、できれば、外壁側の壁で各部屋3箇所程度、東西南北すべての面で計測してもらって、全体が1/300以下程度であれば、特に建物の傾斜に問題はないと判断ができます。
ちなみに、新築引渡し時の基準は、3/1000、中古物件の場合は、6/1000程度となっております。ただし、この柱の傾きの計測による判断は、その傾斜が震災の影響で発生したかどうか?ということも重要な視点なので、元々、地盤沈下があったところなどでは、地震による直接的な影響によるものではないかもしれませんし、古い住宅などですと、木造であれば柱の木材の乾燥収縮により多少のズレが発生してきますので、あくまでも判断の目安としてお考えいただければと思います。
なお、柱の計測によるものに併せ、「建具の開閉」も確認するとより判断の精度があがります。外壁面にとりついている窓の開閉がすごく硬かったりする場合は、窓枠の変形が予想されるので、壁、柱に変形がある証拠になります。部屋の出入口のドアが開かないなどの場合も同様です。ただし、それらの現象が、地震発生前からの場合には、地震による影響とは言えません。
このような簡易的な調査を、おうちの方々でおやりになり、その傾斜具合が、1/300を超える場合には、一度、専門家の調査、判断を求めたほうがよいかもしれません。