建築工事の「相見積」って有効だと思いますか?

消費者問題、特に「悪徳業者」がワイドショーなどで取り上げられますと、特にやり玉にあがるのは、必ずといっていいほど「リフォーム工事」などの建築工事です。そのたびにコメンテーターの方は「複数社から見積をとって比較すべき」ということをいいますが、そこまでは良いとして、それを総称して「相見積をとれ」というコメントをしたりします。

新築はもちろん修繕に関しても、また模様替えなどのリフォーム工事にしても、少しでも安いところに依頼したいという気持ちはわかりますし、私どもも、例えば食材を買いにスーパーにいくにしても安いところに行くようになるわけですから、消費者の立場から言えば同じ行動パターンではあります。ですが、いろんなところから「見積」をとるにせよ、それらを「相見積書」とするにしても、それが有効か?というと、必ずしもそうでもないことのほうが圧倒的に多いです。その理由を説明します。

そもそも「相見積書」というのは、公的機関が入札制度を使うまでもなく、できるだけ早く購入を決めたいときに価格調査を「見積書」として複数取り、結果、安いところに発注をしようとすることを合理的に行うための仕組みです。これを民間でも大きな組織、会社などでも採用していることが多いです。ですが、これが有効であるのは「物品購入」などの、「すでに決定している仕様の物品」をより安価に購入実施する場合なのです。身近な例でいえば、ネット通販で1円でも安いところを比較検討するときに似ています。

つまり、建築工事などで「相見積書」をとるということになれば、その建築工事自体の仕様書がなければなりません。ところが、ワイドショーなどで話題になる「悪徳業者」問題では、そもそも、仕様書もなく、ご依頼されるお客さんも、例えば「外壁の塗替え」という抜本的な部分での目的を伝えるだけなのです。これで複数社の見積を横一線にならべて比較した場合、なにがどうちがうか?そしてその違いが意味することが理解できるのか?というと甚だ疑問です。はっきり言えば、そのような比較ができる方は、ある程度、専門性の高い知識を有していると言えるからです。

例えば外壁の塗替えを例を使えば、その外壁を塗替えする場合に必要な作業手順として、塗装の手順だけでも、洗浄→下塗り→仕上げ塗り、という工程があります。それを見積書の内容として書かれているか、また、価格に反映されているか?がわかりますか?ということです。

具体的な見積書の記載例としては、

◎パターンA
 外壁洗浄 高圧洗浄 100㎡ 単価\500/㎡ 金額¥50,000
 下塗り プライマー塗布 100㎡ 単価¥1,000/㎡ 金額¥100,000
 仕上げ塗り 防水形複層仕上塗材 100㎡ 単価¥2,500 金額¥250,000

◎パターンB
 外壁塗装 材工共 100㎡ 単価¥3,000 金額¥300,000

この2つの例をあげれば、パターンAでは、塗装に必要な手順はすべて書かれていること、また、どのような塗料を使うか?なども記載があり、それを単価と施工面積を記載した上で金額を記載しています。パターンBにおいて、施工面積と単価の記載があり、結果として合計金額の記載があるだけです。「相見積書をとる」という一般的に解釈されている場合、おそらく、パターンBのほうが安価であるので、パターンBを提示した会社に工事をお願いすることになるわけですが、少し内容が心配ですので、パターンAに記載された内容をBに問い合わせることになると思います。果たして、細かい作業の内容が聞かされると思いますか?

まず、無理だと思った方がいいです。なぜなら、そんなことが説明できるのであれば、仮にパターンBのような記載をしたとしても、どのような施工内容にするのかということを見積書に明記するはずだからです。なぜなら、信憑性の低い書類を提示することは「信用問題」に関わるからです。皆さんが、単純に金額比較だけで工事業者を決めるというスタンスにこそ、いわゆる「悪徳業者」がつけいってくることになるとご忠告申し上げます。

さらに、新築の場合にはさらにややこしい話しになります。同じプラン、同じ設備仕様、同じ仕上げ内容など、設計自体が同じもので見積を取るというのであればわかりますが、いろんな工務店や設計事務所を廻って、概算見積などを取ったとしても、その金額がある程度信憑性があるというのはあくまでもその会社が提示した「プラン」であって、別々のプランを横一線に比較できるようなことはありません。どうしてもというのであれば、まず、皆さん方が納得したプランを設計事務所などで作成してもらって、それをベースに見積を複数社依頼することになりますが、作成されたプランが、今すぐにでも施工できるレベルの設計図書であるか?というと、民間の、それも個人の住宅レベルではそのような設計図書の成果物を作成するということは非常に稀ですので、結果として、記載されていない部分については、見積を依頼した各社が「推測の元」金額を入れるしかありません。また、より完成度の高い設計図書を求めるとすれば、もちろん設計費用などを請求されることになります。まだ、見積段階なのに、設計費がかかるなどと言われると、おそらく大半の方がそれを望むことはないと思います。

つまり、建築工事について「相見積」を取りたいということであれば、新築にしろ、リフォームにしろ、比較できるだけの情報が詰まった「設計図書」なりの仕様書がなければならず、単に複数社から見積を取ったとしても、それが判断できるような知識やノウハウがなければ、判断ができないということです。ですので、相見積を取っていくことを考えるのではなく、プランの良し悪しやどのようなコスト割合になるのかなどの詳しい説明を聞かせてくれるところに数軒回り、いろんな相談をする中で、信頼できそうなところを見定めるということが必要になります。

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