以前のブログテーマで、今度の2025年改正建築基準法の施行で、木造建築物における構造耐力の評価として、地震時などの水平力が作用した場合に作用する、「柱の引抜力」に対抗するための金物補強についての検定式の変更を取り上げました。
簡単にいうと、従来のN値計算式に、「H/2.7」という補正項が追加されているということで(Hは、階の横架材上端間距離)、この式通りに評価すると、現在の木造建築物、特に住宅の場合、Hが3.0~3.1が多いことで、計算されるN値も1.11倍以上求められるということになり、少なくとも今年までに建築された建物が来年度以降、この構造部分で「既存不適格」となることが見込まれるというわけです。
これは、結構、デカい問題で、法律の施行説明では、4月1日以降着工分からこの改正基準法の適用を受けるということですので、来春着工物件は、事実上、この改正基準法に対応していかなければならないわけです。当たり前に構造計画をしている、例えば、弊社のような許容応力度法による構造計算を行っている場合には、この影響はほとんどないのですが、構造計算を行わず、単に仕様規定という法律文言にさえ沿った形で設計を行っているところでは、場合によってはかなり大きな影響が出るということが懸念されるわけです。
ところが!実は、ブログの#4でもご紹介した、「2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書」の暫定版として公開している資料が、なんと、
『第3章3.3 木造』 R6.11.21修正版(外部リンク(一財)日本建築防災協会)
として、こっそり修正されておりましたwww ゆえよwww マジでwww
では、どうこっそり変わったか?を以下の画像でお示ししますw
わかります?
○当初、暫定版
○2024.11.21修正版
つまり、一般的な木造建築、具体的には、3mの柱を使って、当たり前に階高を設定するような建物の場合、この補正を使うことはまずありません。ただし、以下の文言も追加されています。
これは3.2mを超す場合には、柱の設置位置と金物の種類の表を使った金物の選定は、横架材天端距離が3.2mを超す場合は、最低でもN値計算を求めるということを、事実上、明示したことになります。まぁ、3.2mを超えるというのは、どちらかというと、非住宅、施設建設に多いわけで、そんな建物を設計するのに、構造部分を「仕様規定に頼る」、「構造計算はしない」ような設計者は、すでに、構造に関する判断力量がかなり不足しているので、こういった文言を追加することによって、法的な側面でも抑止しているのかな?と感じます。
というわけで、おそらく、この暫定版修正によって、N値計算については一応の決着ではないか?と考えております。弊社では、着工時期にかかわらず、現在設計している建物については、2025年の改正基準法においてもしっかりクリアできるような内容で「設計のやり直し」を行っております。
なお、今回のN値計算の問題は、先ほども書きましたが、弊社のように「許容応力度設計」により構造計算を行っている場合には、このN値計算に相当する設計計算は行いますが、高さの考慮はされておりますので、その分、厳密に金物選定されておりますのでご安心くださいませ。