建築「確認」と建築「許可」の違い その2

その1に続きます。

その1では、確認申請という行為について、その遅れなどの理由を業者が「許可がおりない」という説明を行うのは、もはや法的な部分での理解ができていない業者であるということを説明しました。再度、申し上げますが、「建築確認申請」は「許可」ではありません。法的な部分での適合要件を満たしているかどうかを「確認」するだけの行為です。従って「確認」した側の審査機関は、「記載されている内容の確認」について責任があるだけで、実際の設計内容や施工方法に何ら責任はありません。実は、この点を勘違いされている方が大半で、建築絡みの問題が発生すると、役所や審査機関に、

「あんたらが許可を出したからこんなことになったんや!」

というクレームを入れる方が多いのですが、これは、「お門違い」なわけです。

役所や審査機関は、提出された建築計画に対しての法的な基準をクリアしているかどうかの「確認」を行ったにすぎません。何度も言いますが「許可」ではないのです。そもそも、法的な建築制限を受けていない内容の建築行為を誰も止めることはできません。社会的に公益性を著しく低下させる場合にしか工事を差し止めることなどできません。また、仮処分として一旦差し止めされたとしても、その後、法的な審議を踏まえ問題ないとなれば差し止めは解除されますし、差し止めを要求した側には何らかの「損害賠償請求」を行うこともできます。

では「許可」っていうのはどういうことなのか?といいますと、極々簡単に言えば、

法的にダメって言われてることを個別の事情で「よし」とする

ことなのです。建築の場合、そこで建築しちゃダメ!って言われている場所で建築したり、そんなもん建てたらダメです!って言われているような建物を建てる場合に、個別の事情を細かく審査し、公益性に反しないのであれば、「いいですよ」と認めることが「許可」というわけです。

世の中には様々な規制でダメって言われていることが数多くあるんですが、建築に絞って考えた場合に代表例として挙げられるのが、前回もご紹介した「市街化調整区域」での建築なわけです。市街化調整区域では原則として建築は禁止です。「原則」としてです。でも、実際には、そういうわけにもいかないことが多いです。

例えば、この「市街化調整区域」に自分が所有する土地があって、そこに住宅なり工場なり、事務所や店舗を構えたいなどと言う場合があるでしょう。その場合には、

こんな感じの建物を建てて、こういう事業をやりたい(ここで暮らしたい)んだけど、ダメ?

っていう感じの「許可申請」を行うことになります。これを「開発行為許可申請」といいます。

この「開発行為許可申請」にはモードがいくつかあります。それは、土地自体の状況を変える「造成工事」を伴うか伴わない場合かで変わります。法的には、建築だけなら「43条許可申請」、造成を伴うなら「29条許可申請」となります。

例えば、実家が市街化調整区域にあって、そこにご両親と一緒に暮らすために若世代の住宅を建築する場合には、「43条許可申請」が必要となります。この場合、43条が適用できるのは親族の「住宅」であって、他人のための住宅を建築したり、他人に土地を提供して住宅を建築させることなどは「できません」。自分が所有している土地が10,000㎡とかあって、そこを大規模造成とか行って分譲地にするということを、「市街化調整区域」でやるためには、まずは「市街化調整区域」から外してもらう協議が必要になりますので、個人的な事情でできるレベルのことではありません(市街化調整区域外であれば、開発行為許可申請を行えば、よほどの事情がない限り許可はおります)。

この「開発行為許可申請」は、許可できる要件をすべて満たしているか?ということを審査しますが、その内容は、結構厳しいものがあり、敷地の形状の確定や隣地地権者との地境の確認書及び建築することに関する同意書なども必要ですし、この敷地から「排水される雨水」などの排水経路をどう流すか?など、

「ここに建築物が存在することでの影響」

をすべて明らかにした上で問題がないことを示す必要があり、その結果を審議して以下のような「許可通知書」が出されます。

もちろん、建物自体の法的な適合性は言うまでもありません。従って、「確認申請」も必要となりますが、この確認済証が発行される大前提が、「許可」を受けたか?となります。

工場や店舗、事務所などの大規模な建物であれば、このような気遣いはだれもが行うのですが、一般の住宅でそれもちょっと部屋を増築する場合でも、こんな許可まで取るをメンドクサイと内緒でやる方がおられますが、その建物自体の存在が公的に認められない状況では、後日、何らかの問題が発生したときに、何の助けも得られず、最悪、撤去を求められることもあるわけですので、きっちりとした筋道をたどることは重要なわけです。

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