現在、一般的に言われている「木造住宅の耐震診断」というのは、昭和56年6月以降に建築された住宅が対象となっています。これは昭和56年6月から施行された建築基準法がそれまでの耐震基準よりも強化された「新耐震基準」というものになったというのが理由です。言い換えますと、昭和56年6月よりも前に建てられた住宅は「旧耐震基準」での評価であり、この旧耐震基準で求めている耐震性のレベルが「低い」ということなのです。
大きな地震が発生した際に被害状況を調査すると、新耐震基準と旧耐震基準との間には明らかな被害数の差がでてきます。例えば、最近では「熊本地震」の被害状況をみますと、

新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法(新耐震木造住宅検証法)より
昭和56年5月までのいわゆる「旧耐震基準」で建築された木造建築物の被害は建設同年の全体数759棟のうち損傷があったとされる建築物は95%にも上る被害を受けています。であれば「新耐震基準」で建築された木造建築物であれば問題ないのか?といいますと、昭和56年6月以降で平成12年5月までの建築物においてみますと、80%の木造建築物が被害があったとされています。
この平成12年5月というボーダーは、阪神大震災による地震被害に対応する耐震基準が新耐震基準に加え追加されたもので、この平成12年6月以降の基準で作られる木造建築物でようやく40%を切るレベルの被害数となっています。
この調査結果から言えるのは、少なくとも「新耐震基準」という括りでの耐震評価は実態にそぐわないということと、法律の変遷で、「旧耐震基準」、「新耐震基準」、「平成12年新耐震基準(以下、2000年基準)」という3つのボーダーがあるという現実なのです。
では、新耐震基準と2000年基準との違いですが、ざっくり書くと、
1.地盤調査の義務化(地盤状況と採用する基礎構造の選定)
2.接合部の強化(柱頭、柱脚、筋交い、基礎との接合)
3.耐力壁配置バランス(四分割法、偏心率などによるバランス確認)
4.水平構面という考え方の導入(床の剛性による耐震性強化)
というものです。ですが、2000年基準における変更は抜本的な「壁量」と言われる耐震性を担保するための耐力壁の量については変更がありません。単に1から4の内容が追加されただけにすぎません。ですが、ここに単なる量的な問題だけではなく、金物による補強(追加の強度)や、耐力壁の配置のバランスによる揺れへの対応による効果が高いわけです。「壁量」は同じですが、結果として耐震性の歴然とした差が発生したわけです。
ここで、皮肉なことに、昭和56年6月以前の建物をルールに則って改修すると、「補助金」も受けることができて、かつ、2000年基準よりも前の新耐震基準の住宅よりも数段高い耐震性を有することになるわけです。言い換えますと、仮に旧耐震基準の住宅の耐震化率が100%になったと仮定すると、もっとも耐震性のない木造建築物は、同じ新耐震基準であるにもかかわらず、2000年基準よりも前の建物が最も低い耐震性の建物だということになってしまうわけです。
そこで、整備されたのが「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法(新耐震木造住宅検証法)」なのです。この検証方法では、ステップ1として所有者等による確認というものが用意されています。




所有者がマニュアルに従って自己評価し、点数制で専門家の診断が必要かどうかの判断を行うというものです。正直、ハードルが高いので一気に専門家による診断というのも選択肢のひとつかと思います。以下は判断までのフロー図です。

最終的な診断による判断は、旧耐震基準に対する耐震診断と同じ診断手法を使うことになりますが、ここで重要なのは、
「細部までの調査」
ということになります。例えば、2000年基準よりも前の新耐震基準でも、住宅金融公庫の融資を受けている場合には、部分的に金物の設置がなされているケースがないわけではありません。そういう建物が建築されたときになされた措置をくまなく調査しなければ、「耐震性がない」という判断は下せません。なにしろ、壁量という部分ではクリアしているはずですからw
旧耐震基準の住宅の耐震化率がある程度伸びてきている今、次の問題としては、この新耐震基準の2000年基準問題だと思います。今後、この部分の補助なども出てくることを期待しています。

