耐力壁の強化は大規模の修繕・模様替になるのか?

以前のブログでもテーマにしました「2025年4月改正基準法施行と耐震改修」についてですが、ほぼ法運用上の判断も付き始めています。

繰り返しになりますが、今回の法改正では、住宅におけるリフォームとして、主要構造部の過半の改修が行われる場合も、4号特例が廃止縮小されたことにより、緩和規定がなくなり確認申請の必要がでてきました。主要構造部とは、建築基準法第2条5号で「壁・柱・床・梁・屋根・階段」と定義されていますが、そのため、

・「壁」に対しての補強工事が建物全体の壁量の過半を越える。
・「柱」に対しての金物設置工事が建物全体の柱数の過半を超える。
・「屋根」の軽量化のために瓦から金属屋根に改修する場合。
 (※仕上げのみであれば規制を受けない)。
・「床」をめくり再構築する工事が建物全体の床面積の過半を超える。
・「階段」の架け替え
・「屋根、床」を支える梁の過半の改修。

というこれらの改修内容は、そのまま耐震改修工事でも行われるような改修ですので、耐震改修工事を行うために「確認申請」が必要なケースが出てくるという懸念がありました。昭和56年以前では住宅建築における確認申請を受ける受けないについては、法律として整備されていましたが、実態として無申請で建築が行わるなど特段不思議なことではありませんでした。もちろん、法的にはダメなことではあります。

そうなりますと、当然、現状で確認申請を受けると「造反」となるケースは多々あるわけです。特に多いと思われるのは「建ぺい率違反」だと推測します。手狭になった住宅に対して、一部屋増築したとか、納戸を併設したとか、また、カーポートの設置により、それが開放性が高いと認定されなければ建築面積に入りますので、結果として建ぺい率違反になるなど、容易に考えられるわけです。

従って、S56年以前の建物に対する耐震改修工事を計画する場合には、できるだけ「大規模の改修」、「大規模の模様替え」にあたらないような補強計画とする必要があるわけですが、改正法の実際の運用においては、

「それほど意識せずとも問題はない」

と言えるのです。以下は、国土交通省が提示している「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」という資料です。

画像はその資料の中の、「外壁の改修」に関する取扱い事例の説明なのですが、耐震ではなく、断熱改修の場合の壁の改修事例での説明です。

実は、このイメージがそのまま判断材料になるのは、断熱を入れるための改修を、そのまま「筋交い設置」や「構造用面材」設置として読み替えますと、この図がそのまま判断材料として使えるというわけです。条件があります。図にも示されていますが、壁の改修範囲はあくまでも「柱を除く」、柱間での施工なわけです。図では断熱材となっていますが、これがそのまま「筋交い」に置き換わったても、同じ判断でOKなわけです。

ただし、この図通りの判断をする場合には、あくまでも断熱改修を元にしていますので、原則「室内側」からの施工を想定しています。言い換えますと、室内側から耐震補強工事を行う計画の場合には、壁を改修するとはいえ、「大規模の改修」、「大規模の模様替え」にはあたらないというわけです。

ですが、改修計画では外壁側での改修もあります。これも実は、以下の「大規模の改修」、「大規模の模様替え」にはあたらない事例を参考にできます。

この事例で、「(2)屋外側に構造用合板がない場合」という例があります。拡大します。

この事例の場合、外壁側、柱面までが改修範囲として紹介されています。柱面に構造用合板を張るというのは、この改修範囲への施工(胴縁施工に準じるもの)になりますので、「大規模の改修」、「大規模の模様替え」にはあたらないと主張できるわけです。

ちなみに、筋交いは、「主要構造部」ではなく、「構造耐力上主要な部分」でしかありませんので、過半の改修、修繕の対象となる主要構造部ではありません。

ですが、このような場合でも「大規模の改修」、「大規模の模様替え」に当たる場合が考えられます。それは、

「柱の過半を入れ替える(交換する)」
「壁をぶちぬいて柱だけにする」

場合です。これは少々注意が必要です。特に、壁の場合は要注意です。よく、リノベーションですべての壁を撤去し、柱だけを残してやり直すというものがありますが、これは純然と壁の改修になりますので、過半であれば確認申請が必要になります。どうしても確認申請を避けなければならないのであれば、過半とならないように、残す壁と解体する壁をしっかり分ける必要があります。また、このようなリノベーションの場合、床の上張り施工などではなく、根太を露わにして改修したり、階段を架け替えたりする場合に、過半の改修に当たる場合もありますから、内容や面積を十分に吟味しないと確認申請が必要になるというわけです。

耐震改修工事だけを考えた場合、このような壁をぬいて改修するような箇所などそれほど多くはないでしょうし、柱の大半を入れ替えるなどということもありません。従って、一般的な耐震計画を立案する場合に、確認申請が必要になるようなことは、ほとんどないというわけです。

それでも、審査機関によっては、「安全側理論」によって「確認申請が必要」と判断されることもあるかもしれません。まずは協議することが大事です。その際、民間審査機関よりも、行政への問い合わせをお勧めします。


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