築25年の中古住宅を購入された方より「天井から雨漏りが!」というお問い合わせがあり、現場を見に行きました。

天候が不安定だったので、事前に屋根面の状況などは確認させてましたが、確かに経年劣化による屋根状況は芳しくなく、もはや手を入れないとダメな状況であることは一目瞭然でした。


この屋根面の劣化が「雨漏りの原因」とすることは一番疑わしいことなので誰もが思うことだとは思いますが、25年という築年数を鑑みると、雨水の侵入に対する対策はかなり吟味され、それなりの施工方法もとられていた年代ですので、よほどの施工不良がなければ影響が現れるということは実は考え難いのです。屋根の施工不良があれば、もっと早い段階で雨漏りが発生します。確かに経年劣化が仕上げ材が劣化することで時間が経ってから雨漏りの発生がないわけではありませんが、下葺き防水もあり、にわかに雨漏りが発生するとは実は思えません。
屋根からの雨漏りでもっとも多い原因は、暴風雨の際の「逆水」という現象によるものです。屋根勾配にさからって雨が風によって吹き上がることで、なんと雨水が下から上に昇る現象が発生します。建築は水勾配を吟味し、かならず、下から上にモノを重ねていく作り方をしますが、普段の雨の場合にはある程度勾配があれば流れ落ちますが、暴風雨になり逆水がおこると、重ねた部分に水が染み込んでいく状況になるわけです。ちょっと雨が降っても雨漏りするっていうのは、屋根面に相当な欠損があることが原因でしかありません。
というわけで調査をしました。
一番確かなのは、天井を解体してしまってみることですが、普段の生活もありますので、できるだけ負担の少ない調査方法をとりました。幸い押入の天井がめくれる状態で、かつ、天井裏が十分見れる状況でした。

上図は雨漏りが発生した「和室」の配置状況です。赤の線は2階を意味しています。この図の赤線の左側がすべて屋根ということになります。そこで、天井面の温度状況を調べてみました。


紫が濃くなりますと温度が「低く」なります。状況は、1階の屋根部分の天井面の温度は「高い」が2階が載っている部分の天井面の温度は「低い」わけです。

ちょっと立面で状況を説明しますと、赤線の部分が外気に面する部分で「外皮」と言われる部分です。そして、この外皮の部分には「断熱材」が施されています。断熱材が施工されている部分は、サーモカメラでは「温度が高い」ことがわかります。この時期、「温度が高い」のは部屋の中で暖房がつけられているからであって、断熱材があるところではしっかりその熱が保持されているというわけですが、断熱材が施されない天井部分はどうなのか?と言えば、その熱はすべて天井を通過して、より上に上がろうとします。
また、和室の天井は、ラミ天といって木目のプリント合板がラミネートされている天井材です。しかも目透かしですので、合板と合板の間は、薄い単板一枚が入っているだけです。言い換えれば、室内の熱がこの天井材を通過することは非常に簡単だということです。

設計図書を参考にしますと、現場状況としっかり合致していますw
2階を支える梁のところまで断熱材を入れる指示になっていますが、この状況では、天井裏の暖気が1階の屋根裏に入っていかない状況にはなりえません。青の矢印が冷気ですが、断熱材の上部分は断熱材の影響で外気温レベルです。これが2階を支える梁のところで、室内からの暖気と接触しますと、ここにいわゆる「雲」が発生しますw つまり「結露」が発生することになります。
これが雨シミの箇所と完全に一致しています。
これが、断熱施工の際に結構うるさく言われる「断熱処置の連続性」というものです。おそらく、壁の断熱材は梁下まで到達せず、天井面くらいで止まっていると思われます。天井裏を目視した際には、2階を支える梁の下端から1階の屋根の天井断熱材が見えましたので、隙間があることになります。こうなれば、1階で暖房された暖気は天井裏にあがり、ほぼ外気と同レベルの温度となる断熱層の上の空気と触れ合うことになりますので、結露は必然的に発生します。
さて、このような結露による雨漏りのような現象は、生活スタイルによって発生したりしなかったりします。特にあまり使わない和室などをたまたま使った場合などには、一時的に部屋が暖められるので天井裏での温度差は激しくなります。一方で普段からずっと使っている、日中の暖房されている部屋の場合には、天井裏の温度も徐々に一定になりますので、結露の発生頻度は少なくなります。
また、換気などをこまめにすることで、室内の湿気を下げるような工夫も必要です。ストーブなどの燃焼系の暖房で、FF式などではない場合には、燃焼による水分をそのまま室内に発散させますので、空気中の水蒸気量は格段にアップします。
というわけで、この和室の断熱改修と、劣化によって限界になっている屋根の改修をご提案しました。


