北陸で建築する場合には、冬場の「雪」は十分に留意する必要があります。いわゆる「積雪荷重」というものです。しかし、2025年4月からの改正基準法における「壁量計算」では、省エネ性能のアップに伴う荷重増加は加味されていても、積雪荷重に関する考慮は含まれておらず、事実上、東京で設計する建物も福井で設計する建物でも、「同じレベルの積載荷重条件」なわけです。ただし、建物の規模によっては「構造計算」が確認申請上、必要な審査資料になる場合がありますので、主に非住宅における木造建築では「構造計算」を行うことになりますので、その際には積雪荷重としての評価は加味されます。
一般的な木造住宅では規模として「構造計算」を必要とするケースは3階建て以外、法的には求められませんので、積雪荷重を加味せず壁量計算を行っている事例が大半ではないか?と推測しています。確認申請の審査で必要か必要でないか?に関わらず、設計安全性の確認の上で構造計算を行うことは耐震性を論ずる上ではもはや必須でしかありませんが、まだまだ世の中でそれを認識して、実際に設計でしっかり構造計算を行っているところは「希少」です。
これらは「耐震性」の観点からの話しですが、本来、積雪荷重をしっかり想定する理由には、「部材の変形」という側面がございます。これをテーマに数回に分けて説明したいと思います。
「部材の変形」とはなにか?ということを示します。イラスト書くのが得意じゃないので、実際の構造図にイメージを書きますwww 屋根に雪が載るというのは、構造的な見地からはこんな感じになるっていうことです。赤のモワモワが雪ですw

雪が積もっていないときは、この赤のモワモワがないので荷重がかかってないと思われるかもしれませんが、材料自体にも重さはありますので、これが掛かっている状態になります。言い換えますと、雪が積もってる状態では、
材料自体の重さ(以下、自重)+雪の重さ(以下、積雪荷重)
という重さがかかっているというわけです。この時、屋根を支えてる梁の一部分に注目しますと、窓の上の梁には屋根の自重と積雪荷重が「小屋束」を通じてかかっていることがわかります。

緑の梁に注目しますと、緑の部分の両端には「柱」が立っており梁を支える状態になっています。でも、柱と柱の間に小屋束が立っていて、その下には柱はありません。この小屋束は梁によって支えられているということになります。
さて赤のモワモワ、積雪荷重が降雪によってどんどん増加していくとどうなりますでしょうか?雪の重みで小屋束にかかる荷重は増大していきますので、梁がそれを支えようとがんばるわけですが、

緑の梁を小屋束で押す状況になりますので、緑の梁は、上図のような「変形」することになります。これを「たわみ」といいます。
この図をもう少しじっくり見てほしいのですが、緑の梁が青の梁のような「極端な状況」になると、その下の「窓」にも影響してくることが想像できますでしょうか?窓の枠が上から押されて変形しますので、開閉ができないことが想像できますよね?
窓を例に出しましたが、実は、北陸の建物では、特に木造では雪が降ると「襖が開かない」ということが当たり前のように発生します。昔からのことですので、「それが当たり前だ」と考えてる方は多いです。雪が融けて春になれば直るのでそれまでの辛抱だという認識の方が多いのですが、なぜ「襖が開かなくなるか?」ということもよくご存じで「たわんで梁が下がったから」っていうことも踏まえてご理解されていますw
でも、これって、雪は毎年降るわけですし、北陸の地で雪を無視することはできません。雪が降れば梁が下がることが想定されているのに、その対策をしないというのは設計上ありえる話しなのか?ということを考えるといかがでしょうか?
実は、この対策を規定している規制がございます。
建設省告示第1459号
建築物の使用上の支障が起こらないことを確かめる必要がある場合及びその認方法を定める件
この表現っておかしいと思いませんか?w 「確かめる必要がある場合」って、普通、建物を設計する場合って、いつでも「確かめて当然」だと思いません?w ところがそうでもないんです。
この告示は、建築基準法施行令第82条に規定される
「保有水平耐力計算」
という項目の中の第4号に規定されている、
「四 国土交通大臣が定める場合においては、構造耐力上主要な部分である構造部材の変形又は振動によつて建築物の使用上の支障が起こらないことを国土交通大臣が定める方法によつて確かめること。」
という部分を受けての告示なのです。言い換えますと、保有水平耐力計算を行わないレベルでの設計では法的に「建築物の使用上の支障が起こらないことを確かめる必要がない」というわけですw 住宅などの小規模建築物で許容応力度法による構造計算を行う場合には、この「建築物の使用上の支障が起こらないことを確かめること」を求められますので、ある種の構造計算を行って安全性を確認する場合には、必ず、「たわみ」に関する検討を行いますが、構造計算を行わない設計の場合にはその確認がなされていないわけですから、雪が降って材料がたわんで襖や窓が開かなくなったとしても、法的にNGなわけではないってことです。
これ、意外と知られていないことです。地震に対する耐震性を心配する声はよく聞きますし、それなりの対応をしている設計者は多いわけですが、その際、構造計算を行っているか?いないか?で、毎年必ず降る雪対策ができているかどうかに「差」が出ているということなのです。
次回は、この「たわみ」について掘り下げていきます。


