#3に続きます♪
雪国での建物設計において、屋根に積もった雪を検討することは必須です。はっきり言いますが、いつ来るか予測ができない地震に対応することよりも、毎年、確実に降り積もる雪の対策をしないという選択肢はありえません。
でも、屋根の雪が構造体に影響を及ぼすことが「屋根の場所」によって違うことをご存じでしょうか?雪国での屋根の設計ではこのことが非常に重要な要素になってきます。以下の図をご覧ください。
赤のモワモワが雪ですw この赤のモワモワが屋根に載りますと、場所によって構造体の様子が違うことに気が付きませんか?

図には、①と②がそれにあたります。①は屋根の中央部分、②は軒先部分です。この①と②の間には非常に大きな力の作用の差があります。
まず①ですが、屋根を支える「屋根垂木」が「母屋」によって「両端が支えられている」状態です。

これを「単純梁」といいます。その一方で②ですが、この場合「屋根垂木」の片方だけが支えられている状態でもう一方はぷらんぷらんになってます。これを「片持ち梁」といいます。

このような構造体の違いが、同じだけ雪が載った場合に作用する「力の大きさ」に、尋常じゃない違いを発生させます。でも、これって、なんとなく想像できるんじゃないでしょうか?
①の場合は両端に支えがあります。例えば棚をイメージしていただければと思います。棚の両端が何かに引っかかっていることで棚がしっかりと保持されます。ですので、本や荷物をたくさん載せても棚が壊れてしまうというようなことはほとんどありません(絶対ないとはいいませんwww)。でも、棚の一方だけが保持されているような場合、あまり重いものを載せますと棚はいとも簡単に落ちますw おそらくお辞儀をするように棚板の先端が下に向くような壊れ方をすると思います。
今回「たわみ」という部分で着目して、具体的にどのくらいの差があるのか?を示して見ます。
①の場合(単純梁の場合)

②の場合(片持ち梁の場合)

という式で表すことができます(建築士の試験には出ますwww)。
この式で、wというのは荷重の大きさです。Lは、その材の長さになります。同じ材の長さで同じ荷重がかかったとすると、この両者の間には、5/384と1/8だけの差が発生します。

それを比べてみますと、単純梁が0.013に対して、片持ち梁は0.125ですので、なんと10倍のたわみが発生することになります。10倍ですwww
屋根に雪が積もったところのフリー素材の写真を探してきましたw

こんな感じでどっぷり雪が載るわけですが、実は雪国の人が屋根の雪下ろしをするとき、この「たわみが場所で違う」ことを体感して脊髄で理解しているので、普通の人は「軒先」の雪をまずなんとかすることから始めますw 屋根の中央付近では影響がないわけではないですが、それなりの作り方をしてれば屋根がつぶれちゃうことはないことを知っています。
ですが、それに比べて軒先は非常に弱いことを知っていますので、まずは軒先の雪を落とすことからはじめるのです。軒先の雪さえなくなれば、とりあえず安心してられるという感じで、屋根の中央については「ぼちぼち下ろす」感じになります。
従って、雪国での建築設計では、この軒先を如何にして守るか?が課題になってくるわけです。軒先をできるだけ出さないというのが単純な答えになりますが、そうすることによりデメリットもあって、それは夏場の日射を遮る割合が少なくなったり、雨の跳ね返りにより外壁が汚れるなどの問題もあるわけです。
「軒の出を深くする」ということになれば、当然、それに見合うだけの雪対策としての「強度」が必要なのですが、残念ながら構造計算をしない限り、合理的な検証はできません。計算をしたとしても、北陸のどっぷりと水分を含んだ雪が、極寒の中、氷の塊になり重量が想定した雪の単位重量をはるかにしのぐこともありますので、絶対に問題がないなどということが言えない場合もあります(ある一定条件で問題ないことを示すことしかできない)。
よって、構造計算を行わず、単に仕様規定だけで構造の良し悪しを判断している設計の場合には、雪対策はおろか荷重に対する評価がありませんので、その影響を推測することすら難しいと言えます。そんな建物の設計がまかり通っているというのが実情なのです。

