「山に生えている木」を使って建築できないの?

非住宅である施設建設を木造とする場合、使用する木材にいわゆる、天然木材として山に生えている木を伐採して乾燥させたものをそのまま使うことができない、という主張をする建築士がいます。さらにおかしなことに、住宅はかまわないが非住宅ではNGであるということを言われる建築士もいます。理由は木材を使う場合には、すべてJISないしJASの認定を受けている「木材」ではなければならないという主張です。JISであろうとJASであろうと、木材は人工的作られるものではなく、林業関係者の皆さんが山から切り出したものを、製材、加工して、建築用の木材として使用するわけですが、それらの建築用の木材に対して、JISなりJASなりの「認定」を受けたものではならない、という主張です。

まず、結論を先に申し上げますが、それは法の解釈を間違って理解していることが原因です。それらの誤った主張がなされる原因となっている法文をご紹介します。

建築基準法(建築材料の品質)
第三十七条 建築物の基礎、主要構造部その他安全上、防火上又は衛生上重要である政令で定める部分に使用する木材、鋼材、コンクリートその他の建築材料として国土交通大臣が定めるもの(以下この条において「指定建築材料」という。)は、次の各号のいずれかに該当するものでなければならない。
一 その品質が、指定建築材料ごとに国土交通大臣の指定する日本産業規格又は日本農林規格に適合するもの
二 前号に掲げるもののほか、指定建築材料ごとに国土交通大臣が定める安全上、防火上又は衛生上必要な品質に関する技術的基準に適合するものであることについて国土交通大臣の認定を受けたもの

この三十七条で示される「指定建築材料」という言葉がなんであるか?を理解せず、その前部分で記載されている「主要構造部その他安全上、防火上又は衛生上重要である政令で定める部分に使用する木材」というところだけを切り取って、主要構造部である「壁・柱・床・梁・屋根・階段」で使う材料を、「日本産業規格又は日本農林規格に適合する」か、「国土交通大臣の認定を受けたもの」という解釈なのです。ちなみに、「指定建築材料」というのは、平成12年5月31日建設省告示第1446号第一より

一 構造用鋼材及び鋳鋼
二 高力ボルト及びボルト
三 構造用ケーブル
四 鉄筋
五 溶接材料(炭素鋼、ステンレス鋼及びアルミニウム合金材の溶接)
六 ターンバックル
七 コンクリート
八 コンクリートブロック
九 免震材料(平成十二年建設省告示第二千九号第一第一号に規定する免震材料その他
これに類するものをいう。以下同じ。)
十 木質接着成形軸材料(木材の単板を積層接着又は木材の小片を集成接着した軸材を
いう。以下同じ。)
十一 木質複合軸材料(製材、集成材、木質接着成形軸材料その他の木材を接着剤によ
りⅠ形、角形その他所要の断面形状に複合構成した軸材をいう。以下同じ。)
十二 木質断熱複合パネル(平板状の有機発泡剤の両面に構造用合板その他これに類す
るものを接着剤により複合構成したパネルのうち、枠組がないものをいう。以下同じ。)
十三 木質接着複合パネル(製材、集成材、木質接着成形軸材料その他の木材を使用し
た枠組に構造用合板その他これに類するものを接着剤により複合構成したパネルをい
う。以下同じ。)
十四 タッピンねじその他これに類するもの(構造用鋼材にめねじを形成し又は構造用
鋼材を切削して貫入するものに限る。)
十五 打込み鋲(構造用鋼材に打込み定着するものをいう。以下同じ。)
十六 アルミニウム合金材
十七 トラス用機械式継手
十八 膜材料、テント倉庫用膜材料及び膜構造用フィルム
十九 セラミックメーソンリーユニット
二十 石綿飛散防止剤
二十一 緊張材
二十二 軽量気泡コンクリートパネル
二十三 直交集成板(ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にし
て長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行
にして幅方向に並べ又は接着したものを、主として繊維方向を互いにほぼ直角にして
積層接着し三層以上の構造を持たせたものをいう。以下同じ。)

でしかありません。この中に、「木材のようなもの」は、

十 木質接着成形軸材料
十一 木質複合軸材料
十二 木質断熱複合パネル
十三 木質接着複合パネル
二十三 直交集成板

なのですが、これらは工場で木材を加工してつくられる「工業製品」ですので、当然、それらがJISなどの規格、認定に沿わなければならないわけですが、「天然木材」である「山に生えている木」は工業製品ではないので、この「建築指定材料」にはならないのです。

彼らの主張の根底にあるのは、「山に生えている木」をそのまま使うことは、その木材の品質により強度にばらつきがあるために使うことをNGとしているというものがあるのですが、それが明確に本文根拠として示されている箇所はありません。たいへんおかしな理屈を主張されています。そもそも、建築基準法では「裏山に生えている木で自宅をつくることを想定」しています。

木材の品質には、

 1.構造用製材
   →山に生えている木を伐採して成型製材して構造材とする。
   ①JAS構造用製材目視等級区分
    甲種構造材(1級>2級>3級)※横架材
    乙種構造材(1級>2級>3級)※軸方向材
    節の有無、節の大きさによる区分
   ②JAS構造用製材機械等級区分
    グレーディング(機械計測)による
    ※節は関係がない
   ③無等級材(JAS規格外)
    上記①②以外

 2.構造用集成材
   →山に生えている木を伐採して薄い板状に製材したものを張り合わせて構造材とする。
   ①構造用集成材
   ②同一等級構成集成材
   ③異等級構成集成材

という区分けがありますが、「指定建築材料」として規定されるのは、「2.構造用集成材」とされる部類のものだけであって、「1.構造用製材」ではないのです。ちなみに、「山に生えている木」天然木材は、無等級材に当てはまります。ですが、山に生えている木を伐採し、そのまま形状を整形させて柱や梁をつくったのでは、それこそ品質的な部分で粗々しいものになったり、品質にもバラつきがでてしまいます。そこで、以下のような基準を設けて木材に等級をつけています。

製材した木材に対して、「区分」に記載してあるような「目視による判断基準」を定め、それらに対してどのレベルにあるか?ということで、特等、1等、2等というグレードをつけています。一般的に構造用製材として用いられるものは、「1等」、「特等」です。それ以下のものは、端材になる部分については、構造材としてではなく、下地材として利用されたりします。

そもそも木材から材料を切り出すことは「木取り」といわれる作業になります。伐採された丸太の断面を、木の持つ性質などを考慮して、丸太のどの部分をどのような目的の木材として製材するかという作業ですが、自然からもたらされた「木」を余さす、きっちり使うことで無駄をなくし、自然に対しての負担をできるだけ少なくしているわけです。

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